市民と議員の条例づくり交流会議
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◆第4分科会「コミュニティ活動と議会」
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全体討議
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中島(飯田市議会議員): 飯田市議会で取り組んでいる自治基本条例について報告したい。飯田市議会では、地方分権一括法の施行を受け、分権時代における地方議会の存在意義や行財政改革における職員や議員の定数の問題、あるいは民意をどのようにくみ上げていくのか、などを検討するために、議会のあり方研究会を立ち上げ、一年間議論した。議会でも条例づくりに取り組んでいこうという議論になり、四日市への視察も行った。その際、熱心に条例制定に取り組んでいるのを目の当たりにすると同時に、条例はパフォーマンスでつくってはいけない、つくられた方がたまらない、ということも学んだ。
条例制定へ向けたフローチャートをつくり、議会議案検討委員会をつくった。そこではこれまでの飯田市の取り組みのいいところはしっかりと評価し、これからの飯田市にとって何が課題なのか、住民自治という観点から何が必要か、将来へ向けてなにができるのかということを議論した。はじめは個別条例、男女共同参画や環境、景観などの条例をつくろうという話もあったが、ちょうどその時期、ニセコの条例もあり、改めて、住民自治、市民自治という観点から、自分たちのまちの憲法、最高規範の条例をつくろうということになった。
当時は知らなかったが、議会に付属機関を作ってしまった。市民の利益につながることであればよいと、市議会議長が委嘱状を議長名で出した。公募委員8名、市議会議員8名、行政職員4名、学識経験者4名。公募委員には19名の応募があったが、選定にはレポートを提出していただき、名前を伏せた上で、議会議案検討委員の投票により、公募委員を選んだ。学識経験者は、自治会の役員やかつて公民館の役員であった方などになっていただき、行政職員については、市長の推薦を受けた。そして、その委員の皆さんに議長から委嘱状を出し、市民会議がスタートした。
市民会議の最終答申を受けたのが、それから半年後。その間、無報酬で夜に集まり、熱心に検討していただいた。その成果を受け止め、議会で検討し、条例制定を目指すという手法をとった。これが16年のこと。17年の4月には、議会が解散してしまうことから、市民会議の成果を、次の議会にも引き継ぐという議長見解をまとめ、それを全会派一致で確認、昨年の5月から自治基本条例特別委員会で議論をしている。
まずは、議会の骨子をつくり、市内20地区で説明会を行い、そこでいただいた意見を踏まえてから、議会の条文素案をつくり、再度20地区で説明会を行った。説明会は、29人の議員が全員で手分けをし、10日間をかけて行なった。そしてまた、そこでいただいた意見を元に、議会で条例原案をつくり、先日、大森先生にもお越しいただき、シンポジウムを行い、市長をはじめ、当時市民会議の座長を務めていただいた方、女性の委員、連合自治会長と議会から私、ということでパネルディスカッションを行った。現在、最後の意見調整を行っている。
はじめての経験ということもあり、分からないこともあったが、他の自治体の条例は、あまり見ないようにし、飯田市なりの条例、自分たちの物差しで条例をつくろうとした。荒削りな部分もあるかもしれないが、最後の体裁を整えて、9月議会での制定を目指している。
坪郷: 昨日来議論にあった議会に審議会は置けるのかということについては、知らずに置いてしまったので、特に異論もなかったのこと。飯田市の事例は議会が中心となって条例制定に取り組む、しかも議会における市民参加の仕組みとして公募市民を含めた審議会をつくり、原案を練り、地区での説明会などを重ねた新しい取り組みで、いくつもの論点があるが、他にご意見があれば伺いたい。
会場参加者: 自治基本条例をつくっている自治体議員の方にお聞きしたいのは、その制度が出来て、市民の自治がどのように変わったのかということ。自治基本条例がほしいという市民に、一体どんな困難があり、なにが自治活動を阻んでいるのか。これがない限り条例が出来ても機能しないのではないか。昨日の栗山町の条例も、たとえば94条2項に関すること、次世代育成支援計画・高齢者介護計画を議決していくことにどれだけの意味があるのだろうか。一方でボトムアップの市民活動という観点から、現在の制度を考えたときに、国の法制度に基づいて画一的につくられる計画が、果たしてこれから機能するのか、それを議会で議決していくことにどれだけの意味があるのだろうかと。どちらも非常に細かく国が縛っている制度。それを具体的に市民が身近なところから制度をつくっていくことに、議会は力を尽くすことの方が大事なのではないか。インターネット中継も横浜市でやっているが、なにも変わらない。公開しても中身がなければ変わらない。反問権や自由討議の制度ができても、中身がなければ、市民は関心を持たない。1万4千人の町で議会が遠いとのこと、横浜市は354万人。市民の側から何ができるのかということをもう一度捉えることが必要だと思っている。
佐藤(洋): 川崎市には自治基本条例(市長提案)があり、制定時に市民委員会がかなり活動したという評価も高いのだが、130万人都市の現場で起きている問題に対応できるのかは疑問。自治基本条例には「情報共有の原則」「参加の原則」「協働の原則」ということが書いてあるが、実際には今回の保育園民営化の問題では情報が公開されなかった。
会場参加者: 世田谷は84万人の自治体で先駆的なこともやってきたが、今は自治基本条例を何とかつくりたいと思っている。市民との協働参画もこれまで進めてきたのだが、現在は逆方向に進み、支所制度も壊れかかっており、逆行した中央集権的な方向に向かいつつある。市民が自治するというところをしっかりと位置づけなければと考えている。昨日来、議会で議論し、議会発でということだったが、世田谷は議員が49人で、自民・公明が強く、議会が一致することは出来ない。飯田市のようには、どうしたら出来るのだろうか。超党派で首長を変えるしかないのかとも思うが、仕掛けとして議会が一体となるにはどうしたらいいのだろうか。
中島: 飯田市でやってこられたのは、まさに全会一致で取り組んできたから。市民主体の自治基本条例をつくるために、まずは市民に理解してもらわなければ、条例などできない。議員には、ここをクリアしなければ生きた条例にならないという考えがあった。はじめに概要説明に行くときには、議会の中での議論で、素案にまではまとまらなかった。市民からも、この条例で何が変わるのかとの意見もあった。しかし、まず議会が変わらなくては、と条例制定に取り組んだ。今後、普及・啓発に取り組み、広く市民に訴えることで生きた条例にしていければと考えている。
又木: 私は厚木の出身で、神奈川でもすこし外れている。横浜や川崎、東京の都市部はまさに政党政治の典型で、本当に気の毒だと思う。厚木には自民党の議員はいない。基本は保守系無所属。地域の代表として地域の課題を背負った議員がたくさんいる。自分たちの議会のイメージとのギャップが大きすぎて、皆さんからは自民党の議員に見えてしまうような方々が、頑張って自分たちのまちや議会をよくしたいと懐深く議論し、頑張ろうとする姿は想像しづらいかもしれない。しかし現実には、ひとりの保守系議員が頑張って皆を引っ張っていくことで、がらりと全体の雰囲気が変わることはあるのです。どこから突破口にするかという意味では、それが可能な地域というのがあり、そういった地域において、議会で自治基本条例をつくっていこうとすることで、全体が変わっていくことはある。大都市はしかし、市民が元気なので、そういったところから進めてゆければと思う。
佐藤(邦): これからはやはり地方の時代だということを改めて感じた。政治家が悪いのは市民が悪いから。政治への信頼回復が大事。そのために議員提案条例や議員活動、選挙のときのマニフェストもそうだが、色々な道具をつかって少しずつ民意を高めて行きたいと思っている。
坪郷: これまで政策の企画立案は市長と言われてきたが、昨日今日の議論で、議会こそが企画立案を行なう、行っていくのだという議論であった。議会は自治体の政府であるという認識も、こういった議論を通じて出てきているのではないか。そのためには、議会は何より討論の広場であるということ。これを名実化していくためにはさまざまな実践が必要で、議会改革も必要。大都市や地域によって違うが、政党会派の間での政策論議も重要だし、同じ政策課題をめぐって対案を出しながら、議論によってよりいいものをつくっていく場であるとも言える。全体的な議会の改革の問題と、政治グループが政策を競い合うことが重要になってくる。また、市民は地域で活動している。色々な動きを進めて、分権・自治を進め、自治体を市民自治の場にしていくことが必要だということだと思う。
(了)
※記録作成・まとめ:渡辺あつ子(神奈川ネットワーク運動・情報編集室)
※会場参加者の発言などの文責:市民と議員の条例づくり交流会議実行委員会(事務局)
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