市民と議員の条例づくり交流会議
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◆全体会:第一部 「小さな自治体の議会制度―その改革の方向性を探る」
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実践報告「栗山町議会における議会改革と議会基本条例の制定」
橋場利勝(北海道栗山町議会議長)
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■4年半にわたる議会改革の成果を条例に
栗山町は人口1万4500人の、農工商のバランスがとれた住みやすい町です。本年5月18日の臨時会で、全国初となる議会基本条例を議員の全会一致で可決、即日施行して以来、マスコミや各自治体からの問い合わせや視察が相次ぎ、その関心の高さに驚いているところです。
実は、この条例は一朝一夕にできたものではありません。地方分権法制定後の平成12年10月に私は議長に就任しましたが、その翌年から議会の活性化、いわゆる分権時代にふさわしい「行動する議会」「開かれた議会」への改革に向けて取り組みを開始し、以来さまざまなものを手がけてきました。直接対話の門戸を拡げようと、昨年から開催された議会報告会の流れの中で、住民の皆さんとの約束を条例のかたちにすることが最良ではないかということから、今回の条例に制定に至ったわけです。いわば、この4年半に及ぶさまざまな議会改革を通じて、たどりついたのが今回の議会基本条例ではなかったかと感じています。
条文づくりにおいては、町民に分かりやすく、親しみがある表現を意識しました。また、自治法等に既に定められているものについては、あえて条例に定める必要はないという意識で臨みました。昨年6月から条例素案づくりに着手し、議会運営委員会を中心に4〜5回の議論を重ね、最後は全員協議会で3回協議をするなど、改正に改正を重ねてきましたが、これまでの流れがあったために、比較的スムーズに制定することができたと思っています。
■開かれた議会へ 栗山町議会改革の実践
次に、これまでの議会活性化と条例の中身についてお話ししていきたいと思います。
@議会中継の開始
開かれた議会、住民参加型の議会を目指すにあたり、いま最も問われているのは情報開示と透明性の確保です。というのも、住民から見て議会は何をしているのか分かりにくい。また、議員それぞれの活動についても見えない部分があります。議員は選挙の時だけ公約を並べて熱心に語りかけるが、当選したらそれっきりだとの住民からの指摘は、私たちにとって大変こたえるものでした。住民によって選ばれたものの、実は住民から最も遠い存在になってはいないか、そうした思いから私たちが真っ先に手がけたのは、議会を公開することでした。
まずは日曜議会や夜間議会について、他自治体の調査をしたものの、まさに「線香花火的」な尻切れトンボ状態のように思えました。そうした中、光ファイバによる町内34施設への通信システム事業が行われたのを受け、議会のライブ中継を開始しました。今年からは録画再生方式で好きなときにアクセスできるようになりましたが、議会の模様が常に多くの方々の目に触れることによって、議員も行政もほどよい緊張感を保つようになりました。住民からの批判を受けるため、十分調査しない質問をする議員はいなくなりましたし、議会の流れをよく理解することで、職員も資料請求などにすぐに対応できるようになりました。住民からの評価に加え、議員が住民の目線を意識するという意味でも、非常に効果があったと思っています。
A情報公開条例の制定
次に情報公開条例の制定についてお話しします。管内で半数の自治体がすでに条例を制定する中、町長は制定にあまり乗り気ではありませんでした。それでは議会が先行してやりましょうと条文の素案を練り上げ、議場で提案報告を行ったところ町側が焦り出し、半年待ってほしいと言われた後、最終的に町側から提案されました。もともと議会では政務調査費交付条例を導入しようと思っていたこともあり、それに先行して情報公開条例を制定しようとしたわけですが、本来、公開請求されるされないにかかわらず、必要な情報は公開していく姿勢こそが大切だろうと思います。
B一般質問項目の掲示
次に、一人でも多くの人に傍聴人として議場に来てほしいという思いから、定例会の一般質問項目を模造紙大に印刷したものを、コンビニやホテルのロビー、商店街といった町内の人目につく場所に張るという試みを続けています。どの程度の効果があるかは分かりませんが、3〜4年前に始めた当初よりも、傍聴者は少しずつ増えた気がします。議会の誠意を見せるという意味でも、重要な取り組みではないかと考えています。
■条例の意図と運営の実際から
C議会報告会の実施(4条7項)
住民とともに歩む協働参加型議会へ改革する上で、いま最も問われているのは、住民の皆さんとの直接対話がないということでしょう。それを打開する方策を見つけたいと、議会報告会を行っているという唯一の自治体へ視察に行き、議会の満場一致を受けて、昨年から取り組みを開始しました。いざ開催してみたところ、当初心配していた議会批判よりも、行政に対する批判が大きかった。このように、住民が行政にどういう思いをもっているのかについて耳を傾けることは、当然のこととはいえ、いままではなかなかできなかったことでした。また、議決までの流れを皆さんにきちっと説明し、批判が想定される問題、住民が疑問に思っている問題については、前もって資料等の準備も行いました。こうした活動は、これまでの後援会への説明とはまったく異なるものです。
今回の条例制定の背景には、こうした報告会をずっと続けて欲しい、議員が変わったからといって辞めてほしくない、との住民の声がありました。直接対話による批判を恐れずにここまで来ることができたのも、住民の皆さんのこうした活動への励ましがあったからこそと思っています。
D一般会議の実施など(11条2項)
つい一昨日、条例11条2項に定めた一般会議を初めて開催しました。一般会議とは、住民の求めに応じて開催するもので、住民―議会、住民―行政の対話を称しています。第一回目の一般会議では商工会議所の役員の皆さんと、企業誘致やまちづくりについて意見交換しました。今後もこうした会議の場を、議会が率先提案するかたちで行っていきたいと考えています。
また、施設利用料金の値上げやごみの有料化といった住民サービスに直接かかわるものについては、これまでも自治法に定められた参考人制度や公聴会を活用してきましたが、今回の条例化にあたっては、あえてきちっと4条3項に定めていきました。また、4条4項では陳情・請願を「住民の政策提案」と位置づけています。とりわけ請願についてはこれまで同様、請願者の意見を聴く機会を設け、それぞれの委員会で議論を尽くして公平に判断していきたいと考えています。
E町長等の反問権(5条2項)
5条2項に定めた反問権については、視察に訪れる方もとりわけ気にされる部分です。実は私も、議長席から議員質疑を聞いている際に、本題とずれていると感じることは多々あります。町側は遠慮して、失礼のないように答えているわけですが、住民の目線から見た場合、腑に落ちない部分もあるだろうと思われました。
そこで今回、議会での議論を深めることを目的に、議長又は委員長の許可を得た上で、町側に反問権を保障しました。それによって自らが不利になることを嫌う議員も多いと思うのですが、しかし私たちの議会においては、反問権は当然与えるべきだ、住民の前で正々堂々と議論することが大切だ、という意見が多かった。今後、執行側が反問のための反問をすることがないよう、注意しながら議会を運営していきたいと思っています。
F自由討議による合意形成(9条)
議会とはそもそも合議体であり、執行側に質問し採決するだけの機関ではありません。議員同士が充分に議論し、最終的に合議にいたる、この議員相互間の自由討議が非常に重要であると認識しています。よく、裏で根回しをしたために、あれだけ問題のある事案がなぜこのように決まったのかが分からないということがあるが、これでは住民の納得は得られない。大切なのは議論の過程であるはずですが、二元代表性を抜きにして執行側についてみたり、町長の提案に何があっても賛成するという議会が多いのもまた現実です。栗山町では、執行側からの提案について今期で5つくらいの修正をかけていますが、一つひとつきちっと議論した上で、責任をもって修正しています。
バブルの頃までは、提案が何でも賛成で通った時代でした。しかしいまは財政も厳しく、取捨選択の必要な時代となりました。知識をもった住民と議会とのギャップも深まりつつあります。そこで、二元性・合議体を意識しながら議論するのが議会の真の姿であるということで、常任委員会、特別委員会で進めてきた自由討議を、今度は本会議でも進めていきたいと思っています。これが定着すれば、「討論」は必要なくなるでしょう。反問権よりも自由討議、あるいは一般会議が、今後、議会として大事になろうと思っています。
G町長の政策提案(6条)と自治法96条2項の議決事項について
町長の政策提案について定めた6条の7項目についてはいずれも、これまで町側は説明責任を果たしてきたと考えています。将来にわたる政策等のコスト計算となると少々厳しいとは思いますが、当然これは質問事項に入るべきものでしょう。
96条2項の議決事件の拡大については、当初から念頭に置いていました。5項目にわたる長期計画については、これまでも全員協議会等で充分町側からの説明は受けていましたが、これらを議決事項にしないのは、議会として無責任だと考えました。当然責任は重くなりますが、住民の付託に応えるためにも、議決事項にすることは議会の義務であろうと思います。今村先生からご指摘を受けた96条1項については、まだそこまで考えていません。
H最高規範性及び見直し手続(19条)
町全体で147ある条例のうち、前文を付けたのはこの議会基本条例が初めてです。そこへ理念や改革に対する気持ちを組み込んだ上で、この4年半にわたる改革の中身をしっかり条文に入れ込みました。本条例はあくまでも議会運営の最高規範であり、出発点です。これに違反する条例や規約はつくってはならないということを、きちっと条文のなかに盛り込みました。
見直しは4年に1度、一般選挙を経た任期開始後に行うこととしました。新しい議員にも、本条例をしっかりと認識してもらったうえで、条例の目的が達成されているかどうかを見極めつつ、公明正大に、住民に説明できるかたちで行っていきたいと考えています。
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