全体会議１「北東アジア平和問題と市民連帯」
朴相增（参与連帯 共同代表／美しい財団 理事長）
第１回韓日市民社会フォーラムに招待してくださったカン・ムンキュウ院長に感謝を申し上げ、この集まりのために苦労して頂いた実務担当の方々と、韓国及び日本で参加した有名な市民活動家とリーダーにお目にかかれたことを栄光に思います。
私がいただいたテーマは、長い間さまざまな側面で論議になって来たテーマでもあって、市民運動の立場でもお互いに違う意見がありえるということもよく知られています。しかし特別に、9.11テロ以後、急激に変化してゆく国際関係と、アメリカ主導のいわゆる反テロ戦争に対して、それなりに批判の声、あるいは憂慮の反応を現わし始めたこの時点で、北東アジアの平和問題と市民団体の役割、北東アジア地域的な枠組みで市民運動の役割を、もう少し過去とは異なった、もっと意図的なネットワークを形成し、意見調整から一歩進んで、可能な共同行動の方向とその運動のフレームを組まなければならない、という意見は、その間続いて開陳されたことで分かっています。
日本の市民運動団体の活動は、最近韓国にたくさん紹介されていて、特に日本市民団体たちの第3世界との連帯活動に就いては、かなりの部分が韓国にも紹介されています。韓国市民運動団体と日本市民運動との連帯活動の中でも、特に注目に値する例をあげれば、従軍慰安婦問題を、世界的な次元で、女性に向けられた暴力に対抗した闘いとして浮上させ、その究極的責任を明らかしたことが、韓国と日本の市民運動の連帯活動の一番代表的な例だったと思います。
その他にもいろいろ重要な事例を列挙することができますが、まず私たちが確認しなければならないことは、韓日間の市民運動連帯が、多元化する世界史の現実と、生の質を高めようとする無限な努力の中で静かに進行しているという事実です。
北東アジアと言えば日本、韓国、北朝鮮、台湾、香港、中国を念頭において考えなければなりませんが、私たちは、現在日本と韓国の参加者たちが協議している北東アジア全体を考慮しながら、日本と韓半島に係わる事項に重点をおこうと思おうとします。
北東アジアの歴史的移り変わり
北東アジアの現実を思う時には、いくつかの重要な歴史的事件を詳記することになります。まず中国の天安門事件です。これは一言で表現すれば、脱イデオロギー的状況に置かれた中国の新資本主義実験で見捨てられる貧富の格差に対する反発と世界的潮流に敏感な青年・学生たちが、自由とデモクラシーを要求し、堕落した党官僚に対する誹謗を、武力で押えたことがこの事件でした。その事件を前後して少なくない数の反体制派が国外に脱出しました.。その中に2000年にノーベル文学賞を受けた高行健も含まれています。
私はそうした意味で、80年代、90年代の東北アジアの歴史を、民主化を具現するために努力して来た時代と見ようと思います。韓国での水平的政権入れ替え、台湾における野党の躍進も結局、70年代からの強い人権と民主化のための絶え間ない努力の結果だと見ます。
もちろん今日(2002)の現実を顧みる時、韓国に民主化の花が咲いていて、すべての人々が自分らが追い求める幸福を思いきり享受しているという話ではないのです。台湾海峡の緊張は相変らず存在し、南北で代置している莫強した軍事力はそのまま相変わらず維持されています。それにもかかわらず南北首脳会談は成り立ったし、相互信頼構築のための努力はさまざまな阻害要素を乗り越えながら続いていることも事実です。
結局このような予期することができた現実に、9.11テロ事態が起きるようになったことで、私たちが思って来た歴史の方向に少なくない衝撃を与えるようになりました。私たちはここで、21世紀世界の現実の中で国際テロの性格やその根源的要素を論ずるよりは、私たちが志向した北東アジアの緊張緩和、平和的共存の与件造成も一歩進んで、望ましい民主社会構築のような極めて平凡な市民のアジェンダを構想した努力に少なくない衝撃を与えたというものを述べたいと思います。
アメリカへ行けばレーガン大統領がアメリカの歴史上、一番立派な大統領だったと主張する知識人たちがいます。アメリカの一国主義、または一極主義は、昨日一昨日仕事ではないです。現大統領ジョージ・ブッシュの父親が大統領である時、湾岸戦争を主導する時も冷戦終結後の新しい世界秩序をアメリカ主導で定着させると主張しました。しかしその戦争は、アメリカ主導で友好的国家の連帯の中で成り立ちました。今度反テロ戦争は、湾岸戦争の場合とはその経緯が違います。ブッシュ大統領は9月11日WTCのテロを「アメリカに対抗した戦争」と言ったし、「これは文明の戦争」と言いました。戦争は百歩譲歩して言えば、すべての外交的そして平和的方法を講じた後の奥の手であるかもしれないと言えます。
しかし私自身が思うに、テロ行為に反対することはあまりにも当たり前で、自国に対する攻撃的テロ行為を防御して自分を保護するということは国家的業務でもあります。しかし反テロを目的にする国際的戦争だと言う時は、その当為性に対して普遍性のある規範が適用されなければならないと思います。しかしそういう冷情な論議は具体的になされなかったようです。韓国と日本は議論するまでもなく反テロに同参し、派兵という手続きを踏みました。
日本の場合は、平和憲法が制定されていながら、日本国民の安全という名分を持って、新ガイドラインを制定し、日本の軍事配置問題を論議しながら、国旗・国歌を性急に制定し、戦後50年を経た今、反テロ戦争に軍事力を動員するようになりました。これも最近除々に明かになってきた日本の右傾化、日の丸外交の真相ではないか思います。
建国以来初めてとなった水平的政権入れ替えを成したキム・デジュン政権は、いわゆるIMF事態の波をかきわけ、難しい部分的な経済成長を成したという評価です。特に韓半島の緊張緩和と長期的な目標としての平和的南北民主統一へ向けた重要な第一歩という成果がありました。ところで今年の始めブッシュ大統領のState of the Union演説で口に出した“悪の軸”の三国は、キム・デジュン政権が推進した太陽政策に少なくない衝撃を与えました。事前の打ち合せがなかったことが知られているように、このようなアメリカ政府の一方的態度が多い人々の非難を浴びていることも事実です。
この反テロ戦争の連続が結局どこまで行くは専門家ではない私としては分かりませんが、確かに私たちが気をつけなければならない方向でアメリカ現政権の指導部は動いていると私は思います。おおよそこのように反テロ戦争が及ぶ結果、あるいは影響を論ずる事にして、このような現実の中で日本と韓国の市民運動がお互いに連帯しながら協力しなければならない部門は何かを考えて見たいと思います。
韓日市民運動の連帯課題
私は韓国の市民運動に関与している人間として時々こんな考えています。韓国や日本にも市民運動団体がよほど多いことで分かりました。ところで韓国の市民運動はその主力が中央に集中されている一方、日本の場合は地域活動がその主力になっているようです。そして日本の場合は、特別にメディアの照明なしでも倦まず弛まず一貫性あるように地域市民の参加で日本社会を明るくしていっていると思います。私は、できれば日本運動と韓国運動の内容と性格を合わせて二等分すれば、望ましい市民運動の形態ができるのではないかと思っています。
もうずいぶん前の事です。80年代に日本キリスト教協議会が主催して集まった日本歴史教科書問題を巡って韓日両国教会の協議会がありました. その時私は東京郊外にある三鷹という所へ行きました。歴史教科で歪曲の不当性を熱烈に責める一女性がいました。彼女は確かに韓国から来た人ではないので在日韓国人だろうと思いました。ところが、東京に帰って来る電車中で会って聞いてみると日本の女性であり、彼女は大学教授で朝鮮人のB級、C級の戦犯に関する格別の研究をする人でした。彼女の著作が何冊かあるという事実も分かりました。東京戦犯裁判の不当性はもう知られた事実だが、朝鮮人問題に対する戦後日本政府の曖昧きわまりない態度も、戦争責任をお座成りに清算した戦犯裁判にその原因があると思います。そういう状況で発展した戦後日本のデモクラシーはどういうものだろう？そして三鷹で会った日本女性の主張が結局、真正な日本社会の民主化に貢献しているのではないか思うようになりました。
2001年にあった歴史教科書の問題は、結局右傾化という日本政治の風土と非民主的な中央官僚たちによるものであると私は思いました。しかし日本の市民たちはそれを受け入れなかったです。日本の草根デモクラシーの底力がこのような機会に示されたと思います。そういう意味で日本市民運動に対して敬意を表します。もちろん韓国中でも日本教科書問題に対して激しい批判論が台頭しました。こうした場合はよくあることですが、‘日本叩き’のいい機会になります。しかし、今度事態を通じて一つ私たちの得たことは、歴史教科書の歴史歪曲が日本教科書に局限された問題ではないというのでした。私たちの教科書にも問題があるという問題申し立てがありました。終戦でも敗戦でも、57年が過ぎた今になって歴史清算という課題の持つ意味がどういうことなのか明確な答はないかもしれませんが、その間日本と韓国は国家レベルで日韓関係に関する共同歴史研究を進行して来たし、まだ明らかな成果はないが過去の歴史に対する共同の認識を持つということは非常に重要な事だと思います。
たとえば日本の人びとと韓国の人々が座って、EUで共同ヨーロッパ歴史教科書を準備したように、私たちの関係を中心に共同の教科書を用意することができたらどれだけすばらしいでしょうか。これは、大統領や首相が協議する手続きも必要ですが、政府が制定し、歪曲された教科書を退けた日本の市民と韓国の市民が自らこの作業を行なう価値があるのではないかと思います。
最近の報道を見ると、日本の有力な政治家がその秘書の不正腐敗によって困境に抜けた事実が分かるようになりました。加藤氏と鈴木氏の話は確かにこの二人に限定された問題ではないだろうし、このような暗くて選り分けられた所で起きる不正と腐敗は韓日両国で似たり寄ったりに起こることです。 腐敗防止のための情報公開は両国の市民運動が粘り強く努力して来たことです。そういう運動が韓国はもちろん日本の本質的民主化の礎石が土台であると思います。今回の鈴木事件は、結局日本市民運動の直接、間接の成果だと私は思います。
韓国の民主化は両面があります。民主化と民族統一はコインの両面だと私たちは思います。統一の課題は要員します。そこにはさまざまな障害が多いということを私たちはよく分かりました。そして韓半島の平和が北東アジア平和に密接に連係されているという事実を否定する人はいないでしょう。
日本の市民運動がこの問題にどのように参加するのかという問題は、単純に解答を整理することはできませんが、韓半島の平和のためになることが日本の国益に相反しない限り、北朝鮮と日本の関係の正常化、あるいは協力関係の形成は重要な貢献になると思います。 韓半島の軍事的緊張関係の解消に対しても、日本の軍国主義化あるいは軍事大国化は役に立ちません。しかしそんな夢を持つ人々はアプガニスタンや中東他の地域のバルカン化を期待しているのかもしれません。そうなれば、日本の軍事的介入が正当化されるからです。それで私はかつてから坂本義和教授が主張するように、日本の平和憲法を守ってどこまでもビ非軍事的貢献を貫徹して、彼が言うHumanilyに根ざした人間安保部隊をつくることができたら、韓半島の軍縮論議にも少なくない貢献になることで信じます。これがすなわち韓国人々の宿願である民主化された統一社会を建設する場であり、日本がいわゆる戦後のトラウマから脱して民主化される道ではないか思います。
そういう意味で今回集まりを企画された主催者に感謝して日本の市民運動に参加している皆さんにお会いできたことを大変喜ばしいことだと思います。