全体会議4 分科会発表
司会:並河信乃(行革国民会議 事務局長)
第1分科会「政府改革」
進行:南宮勤(行政改革市民連合 政策委院長/産業大学校 教授)
竹内謙(環境自治体会議 顧問/前鎌倉市長)
参加者:
(日本側)塩田三恵子(東京・生活者ネットワーク事務局長)、菅原敏夫(東京自治研究センター研究員)、竹内謙(環境自治体会議顧問、前鎌倉市長)、藤原家康(弁護士)、細川邦子(さいたま市会議員)、三木由希子(情報公開クリアリングハウス)、又木京子(神奈川ネットワーク運動代表)、三宅 弘(自由人権協会)
(韓国側)南宮勤(行政改革市民連合政策委院長)、 姜祥旭(交通開発研究員責任研究員)、?承彬(国立順天大学教授)、洋成眸地球村分かち合う運動)、 ?在一(全南大学校教授/光州市民社会団体連帯回の共同運営委員長)
発表:南宮勤(行政改革市民連合政策委院長)
第1分科会では、午前に韓国の行政改革(金大中政権の成果と批判)、市民団体から見た政府改革の課題、政治行政、地方自治、反腐敗行政分野の提案及び議論を行いました。特に、地方自治の強化と不正腐敗防止の分野が、大変重要な課題であるという点で、日本側参加者とも意見が一致しました。午後には、日本の地方自治改革の懸案と課題、情報公開制度の懸案と課題に対する提案と議論を行い、両国の市民社会が次の3点を重視することに合意しました。
(1)市民本位の行政が成り立つことができるよう、中央政府の立法権と財政権を相当部分地方自治体に移譲して、地域の自立性を高めるようにする。
(2)市民立法ができるようにさせる市民立法、すなわち住民発案、住民投票、住民召還、住民監査請求制度を市民が活用できるよう法制度を整備し、市民社会団体がこれを積極的に活用して行政改革を行う。
(3)政治腐敗を防止するため、企業からの政治献金を受けることができないようにするなど腐敗に関わる法制度を整備し、市民団体が中心となった監視活動を強化するようにする。
そして情報公開制度については、両国とも条例と法律を持って制度的な装置が揃っているため、市民団体中心の情報公開制度の活用が市民立法権の活性化につながるはずですが一方で、こうした情報は難解な場合が多いため市民団体が情報の内容を易しく解釈して市民に知らせる活動をしなければならないという意見もありました。韓国側の参加者は、日本側の生活と関わる自治活動に各団体が深く関わっていることに驚き、韓国でも交通環境などの領域別の自治活動に市民団体が直接、関与したら良いという意見がありました。また、女性の政治行政参加を強化する方向で市民団体の活動が強化されたらいいという意見もありました。
発表:竹内謙(環境自治体会議 顧問/前鎌倉市長)
すでにしっかりとしたご報告をしていただいたので、私が付け加えることはほとんどありません。今、言われたとおり、市民社会を築いてゆくためには、市民自らが立法能力を高め、立法の過程に参加をしていくということが非常に大事である、ということが結論的に語られたと思います。
第2分科会「生活の質向上と環境」
進行:先崎千尋(NPO法人有機農業推進協議会理事長)
李コ昇(緑消費者連帯事務総長)
参加者:
(日本側)先崎千尋(NPO法人有機農業推進協議会理事長)、大江正章(コモンズ代表)、下羽友衛(東京国際大学教授)、藤井絢子(滋賀県環境生活共同組合理事長)、前田陽子(神奈川ネットワーク運動政策部長)、下羽初枝(埼玉県西部地区消費者団体活動推進世話人会代表)、小塚尚男(市民セクター政策機構理事長)
(韓国側)李コ昇(緑消費者連帯事務総長)、李相憲(緑色未来事務処長)、 朴成?(アジア太平洋国際理解教育院 国際協力チーム長)、金帰順(釜山外国語大教授)、金?志(環境運動連合幹事)、金?映(地球村分かち合い運動)、?大洙(プルンギョングギ21実践協議会事務処長)
発表:先崎千尋(NPO法人有機農業推進協議会理事長)
第2分科会のテーマは、「生活の質の向上と環境」で、私は日本側の司会を担当した先崎です。韓国側からはイドクスンさんが司会を担当されました。日本側からは6名、韓国側からは4名の発表がありました。
午前中は、それぞれ日本側および韓国側から合わせて10名の方がそれぞれの分野でどんな活動をしているのか、午後からの討議で何をテーマに話したいのかということについてご報告をいただきました。その主な項目を整理すると、第1番目のテーマは食と農についてであります。日本も韓国も農産物の自給率が40%前後と非常に低くなっており、中国、その他の外国への依存が非常に高まっています。そうした現状を踏まえて、これからどうすべきかということが主な論点でした。結論としては、食と農の距離を縮めていく、すなわち韓国で言えば「身土不二」、日本で言えば「地産地消」。できるだけ生産者と消費者が顔の見える関係を強めていくことが、生活の質を向上させることに繋がるということでした。日本では最近狂牛病(BSE)の問題や牛肉、野菜等の偽装表示、不正表示などの問題が大きくクローズアップされていますが、食と農の距離が限りなく広がっている現状ではそうした流れはいわば必然で、それに対抗する方向として、さきほど申し上げたような考え方がでてくるのではないかというのが第1の論点です。
次の論点は、水および環境の問題でした。水質の汚染・汚濁が、日韓両国で深刻化しています。他にも、経済発展の影の部分として、ゴミ問題や公害問題等々が両国とも社会問題として顕在化してきています。それに対して、環境保全の立場から市民運動、住民運動としてさまざまな運動が出てきており、それらをさらに強めていく方向性について具体的なことを含めて討議しました。
最後に生活に生活の質の向上をはかるためには、その担い手の問題が大きな課題であるということで、学校教育でどう展開していくのか、さらに一般市民の意識をどう高めていくのかという点について、両国から具体的な事例の報告がありました。以上のような議論を通じて、これからどうしていくべきかについて次の3点にまとめました。
第1点は、まず実態の把握、調査をきちんとやることです。実態を把握しなければ何をしていいのか分かりませんし、何が問題なのかも分からないからです。 その調査、実態把握を踏まえて、次に学習、教育、そして情報を対外的に広く提供し、問題点をアピールしていく活動が重要です。そして、それを今度はさらに問題解決のために行動に移していく。韓国の状況はよくわかりませんが、日本の場合、問題が何なのかを知っていても行動しない人が非常に多い。問題が分かっているのに動かないということでは、問題はいつまでたっても解決できません。そのためにも、まず、みなさんが住んでいる地域で動いて、一人でも仲間を増やしていく。さらに、それを全国のネットワークにつなげていくということが大事だという結論になりました。
日韓の問題について言えば、市民運動の経験の交流が極めて不足しているので、今後は交流を深めることが大事な作業になるのではないでしょうか。そのため、特に次代を担う若い人たちである学生の交流が必要であろうし、また日常活動している、運動している市民運動家同士の交流も必要になるでありましょう。そうした点を含めて、共通のテーマについて日韓両国で運動を展開していくという方向に進むべきだろうというのが、分科会の結論でした。
第3分科会「平和と人権」
進行:李貞玉 (国際民主連帯代表)
江橋崇(平和フォーラム代表)
参加者:
(日本側)江橋崇(平和フォーラム代表)、安藤博(東海大学平和戦略研究所教授)須田春海(市民運動全国センター)、杉田敦(法政大学教授)、友沢ゆみ子(神奈川ネットワーク)、小林幸治(市民がつくる政策調査会)、熊岡路矢(JVC)
(韓国側)李貞玉 (国際民主連帯共同代表)、 ?三ス (アジア太平洋国際理解教育院院長)、 全定根(地球村分かち合う運動)、 朴興淳 (先文大学教授)、呉太陽(良心的兵役拒否実現と代替服務制度改善のための連帯)、 朴在榮 (慶尚大学校教授)
発表:李貞玉 (国際民主連帯共同代表)
第3分科会では、午前に形式的な側面で多くの議論をしました。大部分の韓国側参加者は、巨視的な側面で重要なことと重要ではないことを決めようという立場でしたし、日本側の参加者は両国の差がたくさんあるので、小さな差を集めて全体的に収斂しようという意見でした。論議の進行過程で、江橋さんのお話のように、小さな差を集めて大きな事を取り集めるようになりました。その結果、平和と人権が分離するものではなく、平和の概念の中に、女性問題、生の質、外国人労動者の問題、人権、難民の問題などが含まれることを確認しました。そして、軍事問題、兵役拒否問題など平和に直結される問題と平和共存を模索するために、北東アジアにある過去の歴史の問題をどう整理するかについて多様な議論がなされました。
特に、過去の歴史の問題に対して、国家と市民社会の責任を分離して見なければならないのか、または政府の責任を市民社会も同時に負わなければならないのかという点について、一部の韓国側参加者は政府の責任を市民社会も一緒に負わなければならないという意見を述べましたし、またある韓国側参加者からは、政府の責任とは別に、市民社会は効率的な協力ができる部分から先に取り組む方が良いという意見も出されました。
午後には、それでは効率的な韓日協力の課題が何なのか、北東アジアの平和と人権を増進させるための市民社会団体の共同の役割について議論を集約する事にしました。その結果、出された意見は次の通りです。
(1) 現在、北東アジアに広がりつつある排他主義の外国人差別に対する積極的対応が必要である。
(2) 良心的兵役拒否運動は、北東アジアの平和定着の次元に昇華しなければならないという議論に帰結しました。その結果、良心的兵役拒否運動は、軍産複合体の強化につながる募兵制への論議へ発展する危険を警戒し、梅香里や沖縄の米軍駐留による問題など、北東アジアの平和定着に係わる問題に、効率的に連帯しなければならないという意見が出されました。 米軍の問題のみならず、両国の軍費増強など軍事力による安全保障概念を変えていかなければならないという議論がありました。両国の市民団体は、北東アジアの軍備増強を見張るネットワークを強化しなければならないという意見に同意しました。
(3) 神奈川ネットワーク運動は、地域の女性の無報酬労動を測定する問題に積極的に介入することも、北東アジア平和を模索する一環だという意見が出されました。
(4) 北東アジアの危機として、北朝鮮の難民問題が重要になってきたが、北朝鮮住民に対する人道的支援を強化しようということに同意しました。
(5) また日韓だけでなく日中韓の間の体験交流が必要で、これを継続していくことのできる積極的な教材開発が必要で、市民活動家の交流だけではなく、一般学生の交流も具体的に実践していかなければならないという意見がありました。
(6) 特に共感した部分は、最近、北東アジアの平和の問題が言論によって歪曲さ`れるきらいがあるという点です。日本では9.11テロ以前はすべての犯罪が中国人労動者によって起こり、9.11テロ以後は特定犯罪は在日韓国人が起こしていると推定され、グローバリゼーションの中で生じた世論歪曲を正す市民社会団体の積極的な努力が必要だということに同意しました。
日韓市民社会が、中国の市民社会形成にも積極的な関心を持たなければならないという意見もありました。
発表:杉田敦(法政大学法学部 教授)
今、李先生から大変詳細かつ的確なご紹介をいただいたので、もう申し上げることはほとんどございません。われわれは現在の問題について考えていますが、当然、現在とは過去と未来の間にあるわけです。過去と現在との関係、過去からみた現在ということに関して、両国間の歴史、不幸な歴史も含めてですが、これについてどう考えれば、われわれは今何かを成すことができるかということについて、ここで、真剣な議論が行われました。他方でわれわれは、現在何かを行う場合に、それが未来にどのような影響を与えるかについても考えなければならないでしょう。しかし、未来は過去と異なり、まだ起こっていないわけですから、何が起こるかは不確定です。したがって、良い可能性と共に悪い可能性についても、ある程度考えておく必要があります。
こうした視点から、今回の分科会では、かなり率直かつ親密な討論ができました。例えば、北朝鮮や中国で、将来に何らかの不安定な事態が発生した場合を考えてみる必要があります。その場合、国家の論理からすれば、主として軍事的な、あるいは警察的な行動を前面に出すことになりますが、すでにその準備の準備といった事態が日本において進行し、韓国においても進行しているかもしれないといった議論です。しかし、そうした国家の論理とは異なるアプローチも同時に可能であって、それを担っていくのは、おそらく国家ではなく市民社会であろうという認識においてほぼ一致しました。
もう一つ、未来に関する良いシナリオも当然考えるべきであり、それに関しては、今後この地域において、両国さらにはより広い形で、相互理解は浸透して行くだろうという点で一致しました。すなわち無用な誤解や、それぞれの意図に関する誤った判断がなくなっていけば、そうした意識の変化自体が平和を作り出す力を持つことを、改めて確認することができました。
第4分科会「市民社会の強化」
進行:金雲鎬(慶煕大学校NGO大学院教授)
柴田武男(聖学院大学助教授)
参加者:
(日本側)柴田武男(聖学院大学助教授)、並河信乃(行改国民会議)、友沢ゆみ子(神奈川ネットワーク事務局長)、浜田忠久(市民コンピューターコミュニケーション研究会代表)、廣瀬稔也(ASAP21共同代表)、丸山茂樹(エントロピー学会)、茂木千佳子(東京生活者ネットワーク運営委員)
(韓国側)金雲鎬 (慶煕大NGO大学院)、申鐵英(経実連事務総長)、 ?康鉉(ボランティア21所長)、李廷秀(緑未来事務総長)、 姜?奎(アジア市民社会運動研究員院長)、 金惠卿(地球村分かち合う運動) 、 車明薺 (長続き可能開発委員会専門委員)、朴弘淳(開かれた社会市民連合事務処長)、(参加連帯共同代表)、 洪日杓(参加連帯幹事)
発表者:柴田武男(聖学院大学助教授)
第4分科会の討論内容を日本側の立場中心にご紹介したいと思います。第4分科会は市民社会強化というテーマで議論を進めました。それで印象に残る議論は絞って二点ありました。一つは市民活動のための資金調達をどうするのか、次に法律的な諸問題をどう考えるのかという二点を中心にご報告します。
日本側からみると、韓国には参与連帯など資金が潤沢で強力な団体が多くあるように見えますので、運動資金を集める技術は何かという、貧乏な日本の市民運動から、そういういじましい質問が出ました。ところが、韓国側からは、韓国の市民運動がマスコミに目立つので、そういう感想をお持ちになったのではないのかと。韓国側も市民運動の資金調達には大変苦労しているという話を聞きました。日韓双方から資金調達の工夫についての情報交換が行われ、積極的に資金を集める努力を頑張るということを、日本側の参加者は痛感したと思います。
それから、法律的問題として、韓国側では市民社会の支援法という国の財政資金を使ってのNPO支援をどう考えるかが議論されました。それから日本のNPO法をどう受け止めるのかという意見が出ました。日本側からは、とにかく法人格取得ということで一歩前進はしたが、税制などの優遇措置が少ない点が問題だという指摘がなされました。
それから、韓国の寄付金品募集規制法という法律が印象的でした。この法律により、韓国の市民団体は、一般的に街頭募金ができず、資金調達に苦労しているということでとても驚きました。ですから、日本側が韓国の強力な団体を見て資金が潤沢だというのはやはり非常に表面的な情報だということを知ることができました。
発表者:金雲鎬 (慶煕大NGO大学院)
第4分科会では、市民社会強化のための法制度や国際協力が討論テーマに含まれましたが、一つはハードウェア的な側面で市民運動を活性化するための環境づくり、もう一つはソフトウェア的な側面で市民団体の責任性と専門性を持って、どうすれば効率的に運営できるのかということでした。そして、国際的な側面で、どのような協力ができれば市民社会の強化につながるかについて議論しました。
両国の市民団体が直面している一番深刻な問題は財政問題で、その中、民間団体支援法とNPO法、寄付金品募集規制法についての話が出て、この法を寄付金品募集法に変えなければならないという意見が多く出されました。NPO法は、神戸大震災以後、どうすればボランティア活動やNGOを法で助けようか、活性化するかという法精神に基づいて作られた法である一方、韓国の非営利民間団体支援法は政府が支援金をどう民間団体に配定するのかに関する手続きと規制法であるから、実際に民間団体を支援するのに役立ったかについては疑問が多いという意見が出されました。日本は、特別に法人格取得の手続き簡素化のための法改正が必要だという主張がなされました。
法制度が整備されるのも重要ですが、資金を確保するためのインターネット、出版物、 CMS、電話を利用した方法、CRMなど会員拡大の努力が同時になされているし、こうした努力はさらに必要でしょう。 また市民に自発性を付与するため、韓国の連帯会議では倫理綱領を制定しようとしており、市民社会の信頼性を高めるために韓日間市民団体倫理規定を制定し、お互いに公表しながら守っていく努力も必要だという意見になりました。