共同決議文

―市民社会交流の増大と歴史認識の共有―

グローバリゼーションは、21世紀の到来と共に速度を増して、途上国の発展を阻害し貧困を増大させると共に、国内の社会的弱者をさらに危険にさらすことで、国際平和と国内の安定を乱している。また、テロ事件とこれに対応した「反テロ戦争」は、国家安全保障の論理を強化させて国際社会を平和の場ではない力の対決の場へと変貌させている。国際レベルでのこのような変化とともに、地域レベルにおいても北東アジアの国々の間の葛藤は北東アジアの平和の定着を困難なのものにしている。

このような状況に直面して、両国の市民団体がテロ事件以後北東アジアの平和を増進するために日本と韓国の市民社会においてどのような役目を果たさなければならないかということを議論する必要性を共に認識して、その結果、2002年4月11日から14日まで、両国間で市民社会フォーラムを開催し、そこで参加した103名が、政府改革、生活の質の向上と環境、平和と人権、市民社会の強化の各部門で、以下の点に合意した。

政府改革

1.市民の意志を反映した「市民政府」の実現のために、市民団体の役割が重要であることを確認して、政治の不正と腐敗を阻むための政治資金制度などの諸制度の透明性の向上、中央政府の権限と財源の地方自治体への移譲を通じた地域自立性の向上、政治行政に対する市民の監視のための情報公開制度の充実化を重視する。

2.市民団体がこのような改革に成果をあげるために、市民自らが政治・行政情報を活用し、立法する能力を養い、制度を確立するのが重要である。

生活の質の向上と環境

1.両国とも低価格の農産物の輸入が増える中で安全な国内農業を推進し食糧自給率を向上させること、急速な経済成長の副産物としての水質汚染とごみの増加で悪化した生活の質を向上させること、及び大量生産・消費・廃棄の社会をつくってきた私たちの世代が自らの責任を果たして次の世代を予め育成することを重要な課題として認識する。

2.このような課題を解決するための具体的な措置として、効率的な政策樹立の前提となる正確な実態把握のため、市民自らの調査活動を強化して、それぞれの地域・学校など身近な場所での現場体験学習を重視し、問題意識を共有する仲間と市民の交流を深化させて、高い生活の質と持続可能な社会をつくるために両国市民社会が協力することが重要である。

平和と人権

1.北東アジアの平和維持と人権保護のための前提として、民族主義と排外主義が強まる可能性を警戒して、持続的な平和維持と人権保障のためにより一層努力しなければならない。

2.北東アジアの平和構築のためには、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を含め領域内の4国の平和と人権に対する共通認識を広める。このような目的達成の一環として、両国市民団体が協力して実施している人道的支援のような活動を、今後一層強化するなど市民社会として独自の対応をしていかなければならない。

3.両国における性差別及び外国人労働者など少数者の不当な取り扱いに対して、並びに韓国と日本の軍備増強の問題及び人権的な立法の問題に対して、市民社会がもっと警戒し、世論を喚起していかなければならない。

4.グローバリゼーションの流れの中で、北東アジアの平和を確保しつづけるために何よりも重要なのは、国境を越えて活動する市民の相互理解の増進である。このために青少年や市民団体の持続的な交流をはかる。

市民社会の強化

1.市民社会の強化のために根本的な課題である財政問題を解決するために努力を集中する必要がある。具体的に、韓国では「寄付金品募集規正法」の「寄付金品募集法」への法律改正である。日本では非営利団体(NPO)法人の設立手続きの簡素化のために法律改正が急務である。これとともに市民団体自らも多様な募金方法の開発などにより積極的に自ら努力を傾注しなければならない。

2.市民社会の強化のために市民運動に対する信頼の向上が緊要で、このため具体的な措置として、市民団体倫理綱領をお互いに制定、相互に公表しこれを守って行けるよう努力する。

このような部門別合意と共に、北東アジアの平和をもたらすために、個々の国家レベルで市民社会の役割をより強化することが緊要であるということで認識を共有した。

また、国際的なレベルで両国における歴史認識の差、優先的な関心の差、及び同一の課題の解決方式における差が、北東アジアにおける平和を確保することに大きな足かせになっているという事実を直視し、両国市民社会の交流と連帯の活性化が重要であるということで認識を共にし、共同課題の論議の場として、今回のような両国間の市民社会フォーラムを持続、拡大してできる限り早い時期に、再び開催することを合意する。

以上のとおり決議する。

2002年4月14日
参加者一同