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裁判所
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【提案骨子】
1 日本国憲法第六章(司法) の改正は行わない。
(1)司法制度改革関係の諸法律が制定され、「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」(裁判員法)による裁判員制度、「総合法律支援法」による「日本司法支援センター」、「改正行政事件訴訟法」による行政訴訟改革等が具体化しようとしている現時点においては、改革による改善の成果を見守るべきであり、直ちに憲法第6章の改正を要するとまでは言い難い。
(2) 違憲立法審査制度の要に位置する最高裁判所が、憲法判断を回避する、いわゆる司法消極主義に陥ることのないように、立法を通じて、最高裁判所の制度改革(司法消極主義の克服)を直ちに行う。
(3) この制度改革が直ちに実施されないのであれば、憲法を改正して、憲法判断の権限を最高裁判所からはずし、新たに憲法裁判所を設置することを検討すべきである。
2 立法などによる、最高裁判所の改革(司法消極主義の克服)の趣旨は、次のものとする。
(1)最高裁判所裁判官の員数を再検討する。
(2)最高裁判所裁判官の国民審査における白票の取り扱いを改める。
(3)最高裁判所裁判官、スタッフの人事の弾力化を図る(#1)。
(4)最高裁判所裁判官の構成比率を是正する。
(5)憲法裁判特別部を設ける。
3 日本国憲法第32条の「裁判所にアクセスする権利」の充実を行う。
(1)市民は、自分や家族などに生じた社会的な紛争を解決し、自らの権利を守るために、公正な第三者による紛争解決の制度に訴えることができる権利を有する。このことを明確にするためには、憲法を改正して、「権利救済を受ける権利」とそれに対応した政府の責務を新たに規定する必要がある。
(2)紛争解決の制度は、原則として公開のものであり、市民参画のもとで、紛争の総合的な解決を目指して営まれる。また、その手続きは、紛争の当事者に身近で出訴しやすく、費用がかからず、書類の作成等が簡素で、迅速なものである必要がある。
(3)憲法第32条の「裁判を受ける権利」は、「裁判所にアクセスする権利」(英文日本国憲法)
であり、(2)で述べた内容のものとして、刑事裁判だけでなく、民事裁判、行政裁判、家事審判、少年事件処理においても尊重されなければならない。この権利を充実させるために、立法により、付帯私訴制度を復活させるとともに、各種の制度改革を実施すべきである。
(4)日本国憲法第32条ないし第40条に定める刑事裁判における被疑者、被告人の権利については、「権利救済を受ける権利」とそれに対応した政府の責務を定める憲法の条文の下に位置付けることとして、内容を整理する。その際には、刑事裁判における被害者の権利にも配慮する。
【提案理由・背景説明】
1 司法制度改革審意見書
(1)憲法と関係法律が規定する現行の司法制度は、これまで市民の人権保障と「法の支配」の実現をはかるうえで、紛争解決の手段としては有効に機能してこなかった。このため、1999年7月に内閣の下に司法制度改革審議会が設置され、2001年6月に「司法制度改革審議会意見書−21世紀の日本を支える司法制度−」がとりまとめられた。そこでは、三つの柱として、制度的基盤の整備、人的基盤の拡充、国民の司法参加が求められた。政府は、この意見書をふまえて、司法制度改革推進本部を設置し、その下に11の検討会を設け、意見書を具体化する法制化等の提言を求めたうえで、その提言に基づき司法制度改革を具体化することとし、同本部顧問会議が「21世紀の日本を支える司法の姿」として、@国民にとって身近でわかりやすい司法、A国民にとって頼もしく、公正で力強い司法、B国民にとって利用しやすく、早い司法、をアピールし、実際に、2004年12月までに数多くの司法制度改革関連法を制定させた。
(2)この審議会意見書は、審議会が取り組んだ「根本的な課題」として、「法の精神、法の支配がこの国の血肉と化し、『この国のかたち』となるために、一体何をなさなければならないか」、「日本国憲法のよって立つ個人の尊重(憲法第13条)と国民主権(同前文、第1条)が真の意味において実現されるために何が必要とされているのか」を提示しているが、「この国のかたち」が論じられるところにおいて、実質的には憲法問題が取り扱われたことは明らかである(#2)。
(3) 審議会報告に端を発する具体的改革としては、「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」の制定により、国民の司法参加が一歩前進し、「調書裁判」ともいわれ、形骸化した刑事裁判が国民にとって透明でわかりやすく、信頼されるものへと変わる可能性をもたらしたことがある。また、「総合法律支援法」は、「裁判所にアクセスする権利」(憲法32条)に裏付けを与え、民事裁判、刑事裁判を問わず、全国において、法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられるよう、支援体制の整備を図るものである。全国に設けられる「日本司法支援センター」では、@相談窓口を通じての紛争解決への道案内、A民事裁判の費用を公的に負担し、補助する法律扶助制度の運用、B被疑者、被告人に対する無料の公的刑事弁護人制度の運用、C司法過疎地域における市民向けの法的サービスの提供、D犯罪被害者の支援、などの業務を一体的に行う、「司法ネット」の構築が予定されている。
また、行政事件訴訟法は、1962年以来、42年ぶりに本格的に改正された。@裁判を通じた救済範囲の拡大、A裁判所における審理の充実・促進、B行政裁判をより利用しやすく分かりやすくするための仕組みの整備、C裁判期間中の仮の救済制度の整備などである。
2 未完の司法制度改革
司法制度改革は未完である。上記の改革の具体化だけでは、21世紀の日本を支える法制度としては不十分である。
(1)2004年4月から改正民事訴訟法が施行され、民事裁判の計画審理、医療や建築の鑑定等のための「専門委員」制度の導入がなされたが、「時間がかかる」裁判について、際立った期間短縮がなされたとは思えない。裁判の当事者が交互に主張しあい、主張の整理後に証拠調べが行われるという民事裁判の構造上、時間短縮には限度がある。このことは、市民勧解制度が必要とされる理由の一つにもなっている。
(2)刑事裁判では、上記のとおり、裁判員制度が実現したが、それは重大な事件に限定されており、すべての刑事裁判に導入されたわけではない。この他、捜査段階における取調べが警察や検察の密室でなされる現状に変わりはなく、取調べ過程の可視化(全取調べ過程の録画・録音)は将来の課題にとどまっている。また、被告人が犯行を行ったと認めていない否認事件の裁判においては、被告人が犯罪を認めるかあるいは検察官立証がすべて終わらなければ保釈されないという、長期の身柄拘束によるいわゆる「人質司法」の実情は改善されていない。
(3)行政裁判でも、上記のとおり、42年ぶりの法改正はなされたが、日本では、そもそも行政裁判の提起がなされても、市民と政府の間で争いになっている政府の行為の執行は停止しないという、執行不停止の原則が維持されたままであり、裁判の期間中も公共事業等は進行することになる。ドイツ等のような執行停止原則は採用されなかったのであるから、行政事件訴訟法改正が十分なものかは、大きな疑問がある。
(4)このような民事裁判、刑事裁判及び行政裁判において、当事者である市民が憲法違反の主張をしても、裁判所は、憲法判断を回避する傾向にある。憲法訴訟の実効性の確保のための手続整備や機構改革は、今回の司法制度改革においては、手つかずである。
(5)交通事故などの刑事裁判に損害賠償請求などの民事裁判を付加して一体で裁判する、いわゆる付帯私訴制度についても全く検討されなかった(#3)。
少なくとも、【提案骨子】3の裁判へアクセスする権利の拡充に関する改革が必要であろう。
3 違憲立法審査
(1) 日本国憲法第81条に違憲立法審査権が規定されていることによって、裁判所が具体的な争訟を通じて憲法を解釈運用する権能をもっており、判例、特に最高裁判所の判例によって憲法の意味が明らかにされるとともに、柔軟な解釈によって条文の意味内容が社会と乖離することを防ぐことができる。しかし、現実には、裁判所は、法律上の具体的な争訟を通じてしか判断できないのであり、また、統治行為論や部分社会論など「訴訟法の留保」によって、裁判所、特に最高裁判所の違憲立法審査権は十分に機能していない。司法消極主義を克服するために、司法制度改革の到達点と課題を検証する必要もある。少なくとも、【提案骨子】2の(1)ないし(6)が制度改革として必要であろう。
(2) 日本国憲法第81条の違憲立法審査権についての解釈と運用は、最高裁判所のあり方に大きな問題を生じさせている。第81条は、「最高裁判所は、一切の法律、命令、
規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と規定する。しかし、内閣の「有権的解釈」に基づく政府・与党による法律が違憲とされることは、ほとんどない。情報公開法や条例を制定し法律や条例違反を主張しつつ、最高裁に対しては憲法違反を上告理由として主張するくらいである。
(3) 憲法第82条の裁判の公開原則は、第1項 「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」、第2項 「裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。」と規定するのであるが、情報公開法において、この公開原則の名の下に、裁判官室(インカメラ)において、当事者だけが立ち会って行う、非公開の審査手続が認められないことになる。裁判の公開原則が、行政機関や独立行政法人等に対する情報公開法や個人情報保護法に基づく開示請求を妨げる方向で機能しているが、それでいいのであろうか。情報公開法、個人情報保護法、さらには行政事件訴訟法の更なる改正において、検討されるべきことであろう。
4 最高裁判所の制度改革(司法消極主義の克服)
ア 【裁判官の員数】
最高裁判所裁判官の員数を、大法廷の開廷が容易となり違憲立法審査権を積極的に行使することができるように改めることが検討されるべきである。裁判官の員数は法律事項であるから、裁判官の数を増やして小法廷を増やすことも、逆に、小法廷を構成する裁判官の数を減らして小法廷の数を増やし、大法廷を充実させることも可能である。現在のように、最高裁大法廷がほとんど開廷されないままでは、社会の変化に対応した判例の再検討をすることは、現実には難しい。
イ 【国民審査】
最高裁判所裁判官の国民審査における白票の扱いについて、それを罷免を不可とする票と計算する方法でなく、これを除外したうえで、積極的に罷免を可とすると記載された票と、不可とすると記載された票で、過半数を決するように改めることなどにより、国民の実質的な付託に基づく最高裁判所裁判官であるようにする。
ウ 【人事の弾力化】
最高裁判所の裁判官は、裁判官出身の者が、年功序列で昇進するので、それに合わせるべく、大体63〜65歳くらいにならないと任命されない。また、藤村益三最高裁判所長官以降、30年近く、民間人出身の長官が生まれておらず、裁判官の順送り人事になっている。司法権の独立の名の下に、かつて司法官僚制の頂点に立った裁判官出身の最高裁長官が君臨しつづける組織は、それ自身に硬直化の問題がある。人事の弾力化が図られねばならない。
また、最高裁判所調査官を弁護士から登用することや、法務省に裁判官が出向しているのと同様に最高裁判所事務総局に検察官を出向させることなどを実施し、人事交流を通じての人事の弾力化が図られるべきである(人事交流によって余った裁判官は、不足している裁判実務に補充することもできる)。
エ 【裁判官構成の是正】
裁判官出身者が過半数を占めている現在の最高裁判所の構成(裁判官出身8:その他7)を、当初の構成(裁判官5:弁護士5:学識経験者:5)に戻す。
オ 【憲法裁判特別部】
裁判所法を改正し、知財高裁特別部の設立を参考に、最高裁判所または高等裁判所において「憲法裁判特別部」を創る。そこでは、最高裁調査官や同事務総局の周辺のキャリア裁判官のうちのエリート裁判官たちにとどまらない、審査権を積極的に行使しうる人材育成を図る。また新しい弁護士養成制度の延長上に、人権訴訟を経験した弁護士の裁判官への任官を大きな流れとし、司法判断を内から変えるなどの方法を講ずる。
カ 【最高裁判所による下級裁判所裁判官の指名手続の透明性と公正の確保】
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣でこれを任命することとされているが、そのために設けられた下級裁判所裁判官諮問委員会の諮問手続を透明なものとし、任官希望者に対する告知や聴聞を厳格に行い、非推薦の具体的理由の告知の手続を保障することによる公正さも確保されるべきである(#4)。
5 裁判所にアクセスする権利の拡充等
ア 【付帯私訴制度】
交通事故などの刑事裁判に損害賠償請求などの民事裁判を付加して一体で裁判する、いわゆる「付帯私訴制度」は、刑事裁判の証拠書類等をそのまま民事裁判に利用でき、裁判所の判断も二度手間にならないことなどの利点がある。裁判のワン・ストップサービス化により、「裁判所にアクセスする権利」(憲法第32条)を充実させるのであれば、この制度の採用が検討されるべきである。
付帯私訴を採用しないのであれば、少なくとも、不起訴事件の記録も含めた刑事訴訟手続における資料をすべて民事裁判手続で活用できるようにするために、刑事裁判記録を行政機関情報公開法の対象情報とすることや、民事裁判上の文書提出義務(民事訴訟法第220条)の対象文書とすることも検討されるべきである。
イ 【各種制度改正など】
・「日本司法支援センター」の適正配置が必要であり、また、法科大学院を通じてのこれを担う弁護士の育成を図る。
・改正民事訴訟法、労働審判法、改正特許法等を完全実施し、一定期間後に見直しを行う。
・民事、行政裁判への参審制、陪審制の採用を進める。
・刑事裁判において、取調過程の可視化及び保釈制度の弾力的運用のために、刑事訴訟法の改正を行う。
・行政事件訴訟法の更なる改正、行政不服審査法及び行政手続法の改正を行う
ア) 行政事件訴訟法では、司法制度改革推進本部行政訴訟検討会が提示した継続的な制度改革や執行停止原則の採用が早急になされるべきである。
イ) 不服申立てがいつまでも判断されない案件が少なくないことに照らしても、審査期間を明定するなどの、行政不服審査法改正を進める。
ウ) 行政手続法のつみ残しの課題である計画策定手続や規則制定手続の整備も求められる。
6 憲法裁判所
(1) 〔提案骨子〕2の最高裁改革に関わる事柄は、いずれも法律改正や運用改善で可能である。しかし、そもそも、法律改正や運用改善自体ができないということであれば、最高裁判所改革はもはや不可能ということになる。そこで、憲法裁判所制度の採否が一つの課題となる。
(2) 憲法裁判所は、各国によって権能を異にするが、@多元的な法体系・裁判権が存在するという前提で、A憲法によって、組織・作用・権限が規定され、その独立性が保障され、B憲法争訟を独占する(少なくとも、法律の合憲性審査を行うこと)をその権能とし、Cこれを構成する裁判官は職業裁判官ではなく、D違憲判決によって抽象的な法令の違憲無効を対世的な効力とする権能を有するものであって、E通常裁判所からの事件の移送を受けることもあるが、通常裁判所の外に位置するものと位置付けられている。しかし、未だ、日本では、誰が選任する憲法裁判所裁判官がどのような争いについて判断するのか、議論は収斂していない。
(3) 司法制度改革審議会意見書では、憲法によって行政裁判権及び違憲立法審査権を付与された裁判所が「これらの権限の行使を通じて、国民の権利・自由の保障を最終的に担保し、憲法を頂点とする法秩序を維持することを期待された」にもかかわらず、「この期待に応えてきたかについては、必ずしも十分なものではなかったという評価も少なくない」と述べ、そして「最高裁判所が極めて多くの上告事件を抱え、例えばアメリカ連邦最高裁判所と違って、憲法問題に取り組む姿勢をとりにくいという事情を指摘しえよう。上告事件数をどの程度絞り込めるか、大法廷と小法廷の関係を見直し、大法廷が主導権をとって憲法問題等の重大事件に専念できる態勢がとれないか、等々が検討に値しよう。また、最高裁判所裁判官の選任等の在り方についても、工夫の余地があろう」と指摘するにとどまった。
違憲立法審査権が適正に行使できなければ、憲法第76条第2項で禁じている「特別裁判所」に該当する憲法裁判所の設置を、憲法の同条改正によって実現することを真剣に考えるべき状況が生まれることとなろう。
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#1 大野正男元最高裁判事は、職業裁判官ではない者を最高裁調査官に採用することも提言しているが(『弁護士から裁判官へ』60頁)、具体化のきざしは全くない。現職の浜田邦夫最高裁裁判官は、就任に際して弁護士からの調査官の登用と、それができなければせめて秘書官への登用とを希望したようだが、裁判所機構のいずれかの段階で差し止めになったとされている。それが事実とすれば広く国民の議論にさらされてよい。司法権の独立の名の下に、司法官僚制はかえって強固なものとなっている。
#2 司法制度改革審議会の佐藤幸治座長によれば、「自律的個人を基礎に自由で公正な社会を築こうとする立憲国家にあっては、政治にかかわる『公共的討論の場(政治のフォーラム)』と司法的正義にかかわる『公共的討論の場(法原理のフォーラム)』によって構成される「公共性の空間を必要とする。・・・司法制度改革はまさに国民の生活に深く根ざした司法のフォーラムを確立せんとするものである」として、立憲国家のあり方を検討したことが、より一層明らかである(「司法制度改革A目標と理念」書斎の窓534号巻頭)。
#3 司法制度改革審議会の審議開始当初、時の法務大臣が付帯私訴制度を積極的に制度化しようとして、「二一世紀に向けた司法制度の改革」と題する文書において、「国がその権限と費用において収集した刑事の証拠資料を被害者である私人が損害賠償等の民事裁判に利用できるというものであり、民事訴訟の効率化と結果の適正化に役立ち、被害者となった国民の救済に効果がある」と評価したうえでその採用を内閣に提案しているが、その大臣主導の改革を嫌がる勢力によって辞任に追い込まれ、検討の俎上に上らなかった経緯がある。
#4 憲法第80条は、下級裁判所の裁判官の任期や定年について規定し、その第1項で「下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。」とする。
これについては、司法制度改革の名の下に新設された下級裁判所裁判官諮問委員会が、裁判官の再任(10年ごと)に際して、それを推薦しない事態の生じることが危惧されるそうした裁判官は、事実上は辞職を強要されているのではないか。諮問委員会が推薦しない裁判官からの不服申立て手続やその前提となる理由の告知等は十分か。下級裁判所裁判官諮問委員会の諮問手続と公開性が問題である。特に、弁護士出身の者からの裁判官の任官を積極的に推進するといいつつも、現実には、任官希望者に対し、「あなたは裁判官としてふさわしくないので任官を答申しない」という告知にとどまる。これは理由の告知にあたるのか。その運用にも問題がある。
(担当:三宅 弘)
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