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■ 第268号(2024年11月15日発行)
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容器包装の3Rを進める全国ネットワークニュース
第 268号 2024 年 11 月 15 日
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先日参加したPFAS(ピーファス:有機フッ素化合物)セミナーで、「日本の腎細胞がんの7割は他国では見られない特殊なタイプ。その原因はPFASかもしれない」という報告がありました。セミナーの講師は、PFASの一種の「PFNA(パーフルオロノナン酸)」を疑っていました。PFNAは日本で作られているPFASで、PFOAやPFOSの規制が進むなか、PFNAの国内使用量は増えたそうです。
日本の腎細胞がんの原因がなんであれ、PFAS自体の危険性はもはや世界の常識になっています。米連邦政府は今年4月、飲み水にPFNAを含む6種類のPFASの厳しい規制値を設定しました。州レベルでも多くの州が、PFASを意図的に添加した製品の規制を強めています。人工芝をPFAS規制の対象に加える州も増加しました。
たとえば、今年1月からPFASを使用した食品包装の販売を禁止したコロラド州は2026年1月以降、PFASを使用した人工芝は「州内のいかなる土地にも設置することを禁止する」と決めました。併せて、クリーニング製品やデンタルフロス、生理用品、調理器具の販売・流通も同年から禁止します。さらに2028年からは、PFASを使用した繊維製品も禁止します。
ミネソタ州やバーモント、メイン州、ロードアイランド州、ニューヨーク州などでも食品包装や調理器具、化粧品などと同様、PFASを使用した人工芝を禁止対象にしています。
一方、食品安全委員会が『一日耐容量』を20ng/kg/日という人体実験レベルのPFAS指標値を決めている日本では、当然人工芝も野放し状態です。PFASは内分泌かく乱作用のある物質(環境ホルモン)ですから、少なくとも発達段階の子どもや妊婦はPFAS含有が疑われる製品から遠ざけるべきですが、保育園の園庭や学校の校庭でも人工芝は増える一方です。
もちろん、人工芝の問題はPFASだけではありません。人工芝は紫外線や風で「風化」し、大気中にも微細なマイクロプラスチックを発生させます。最近は「風化マイクロプラスチック」の危険性も指摘され始めていますが、屋外でプラスチックを使っている限り、私たちが風化マイクロプラスチックを吸い込むことは防げません。人工芝が人体に対するPFAS汚染の原因にもなるのです。
人工芝は確かにメンテナンスの容易さと利便性に優れ、手軽な「緑化」の選択肢として魅力的です。しかし、その見た目の美しさの裏には多くのリスクが隠れ、本物の緑がもたらす恩恵は得られません。私たちが守りたいのは便利でおしゃれな暮らしではなく、安心して暮らせる社会と子どもたちの未来のはずです。
(政策委員 栗岡理子)
------- 目 次 --- C o n t e n t s -------------------------------
巻頭言
<1> 【レポート】 人間の前立腺からマイクロプラスチックを検出
<2> 地域からの報告 NPO法人みどりの市民 渡辺ヒデ子さんからの報告
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■ <1>【 レポート】 人間の前立腺からマイクロプラスチックを検出
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マイクロプラスチックとは
マイクロプラスチックは5mm以下の大きさのプラスチック粒子です。マイクロメートル(1μm)は1mmの1,000分の1に相当します。これまでに、人間の血液や臓器などからもマイクロプラスチックが検出されています。
前立腺組織における初のマイクロプラスチック検出
2024年5月に『泌尿器学』誌で発表された研究は、前立腺組織におけるマイクロプラスチックの存在を初めて報告しました。研究者たちは、経尿道的前立腺切除術(TUR-P)を受けた12人の患者の前立腺組織を分析しました。
マイクロプラスチックの種類と特徴
その結果、12人中6人の患者からマイクロプラスチック粒子が検出されました。特定されたすべての粒子は26μm未満で、形状はペレット、球体、繊維状でした。4種類の異なるプラスチックが確認され、そのうちポリアミド(ナイロン6)が最も多く、3人の患者から検出されました。その他、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、ポリ(ジメチルシロキサン)が1人ずつの患者から発見されました。
前立腺腫瘍におけるマイクロプラスチックの調査
さらに、2024年9月に『eBioMedicine』誌で発表された別の研究では、前立腺腫瘍におけるマイクロプラスチックの存在が特に調査され、これらの発見が拡張されました。研究者たちは、走査型電子顕微鏡、レーザー直接赤外分光法、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法などの高度な技術を用いました。
腫瘍組織におけるマイクロプラスチックの濃度とサイズ
腫瘍およびその周囲の前立腺組織の両方からマイクロプラスチックが見つかり、腫瘍サンプルにおいてより高濃度であることが確認されました。腫瘍およびその周囲の組織からは、ポリアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)の3種類のマイクロプラスチックが検出され、ポリスチレンは腫瘍組織でのみ検出されました。マイクロプラスチックの濃度は、組織あたり181.0μg/gから290.3μg/gの範囲にあり、粒子のサイズは20μmから100μmで、腫瘍組織では50-100μmの大きな粒子がより多く見られました。
テイクアウト食品との関連性
また、この研究では、テイクアウト食品の消費とポリスチレンの検出量との間に強い正の相関関係が見られ、これが潜在的な曝露経路を示唆している可能性があると指摘されています。
プラスチック依存を減らす生活の推奨
マイクロプラスチックと人間の健康への影響に因果関係があるかどうかはまだ明らかではありませんが、プラスチックへの依存をできるだけ減らす生活が推奨されています。特に、プラスチック包装やペットボトル、プラスチック製のカップや弁当容器の使用を避けることが望ましいとされています。
(運営委員 小寺正明)
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■ <2> 地域からの報告
■ NPO法人みどりの市民 渡辺ヒデ子さんからの報告
■ < in長野 >
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<地域活動の実践を通して「脱使い捨てプラスチック」を推進>
私が所属しているNPO法人「みどりの市民」は、循環型社会を目指して生ごみの減量と堆肥化の取り組みを行っています。「食卓から土へ」をコンセプトに土が無くても生ごみの堆肥化が行える段ボール堆肥、畑や庭先で出来るコンポストを推進しています。
段ボール堆肥を推進している過程で見えてきた課題は、堆肥化のための基材が手に入りにくいこと。そして堆肥化をした後の一次生成物の行き先がないことでした。その解決策として立ち上げたのが、基材を配達し一次生成物を回収する竹チップと生ごみを繋ぐ循環システム(通称:どんぐり・るるネット)です。ここで使用する基材(竹チップ)は地域の遊休荒廃地に繁茂している淡竹(はちく)の活用です。このシステムの基本は脱プラスチックです。生ごみ堆肥化の容器は段ボール。配達・回収は運搬用のトラックから直接会員さんの段ボール箱へ。使い捨てプラスチックは使用しません。会員は70名弱ですが、着実に生ごみは削減され、土に還す循環が実現しています。
次に、「みどりの市民」設立以来継続しているのがサロン風セミナーです。年に平均4〜5回、テーマを変えて実施してきました。一貫しているテーマは「脱プラスチック」。最近は「ヘチマでSDGsにチャレンジ」と題して自然素材のヘチマたわしの普及に取り組んでいます。
又、脱プラの意識啓発のために、3R全国ネット主催の「プラスチック削減連続セミナー」で紹介された映画「マイクロプラスチックストーリー〜ぼくらが作る2050年〜」の上映会の支援を資金面と上映会サポートの両面で行っています。(今年の12月までに8回)
現在は、同様に京都市の環境NGO「環境市民」が実施している「お店のプラスチック調査」にも参加中です。
「みどりの市民」は「循環型社会の構築」という大目標を目指して、日常的な活動を通して「脱使い捨てプラスチック」に取り組んでいます。
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● 会議開催日程
◎ 運営委員会 : 2024年11月19 日(火)19:30〜21:00・ ZOOM会議
※ ニュースはご参加、お問合せをいただいた皆さまに BCC でお送りしています。ご不要の方はご連絡ください。
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容器包装の3Rを進める全国ネットワーク事務局
E-mail : reuse@citizens-i.org
URL : http://www.citizens-i.org/gomi0/
〒 102-0093 東京都千代田区平河町2-12-2 藤森ビル6B
市民運動全国センター内
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