小さな町の大きな挑戦!福岡県大木町
九州の福岡県にある日本で2番目に“ごみゼロ宣言を”した町、大木町。人口1万5千人余りの小さな町だが。数年後に、燃やすごみも、埋め立てるごみもゼロにしようとしているのだ。
臭いのないメタン発酵による生ごみリサイクル
その中心にあるのが、生ごみをリサイクルする施設“おおき循環センター「くるるん」”だ。大木町4,500
世帯の生ごみが、ここに集まってくる。し尿と一緒に投入された生ごみは、メタン発酵され、メタンガスと液肥に姿を変える。メタンガスは、コジェネ発電の燃料になる。コジェネ発電とは、熱エネルギーの利用と発電を行う高効率な装置だ。生まれた熱は高温発酵槽を70℃に温める熱に、電気は施設内で利用されている。また液肥は、町の農家が米や野菜の肥料に無料で使える。
驚いたことは、臭いがほとんどないことだ。し尿や生ゴミを投入する部屋では、さすがに臭うが、そこ以外では、施設内でも、まったく臭わない。
生ゴミのリサイクル施設なのに臭いがないのは、メタン発酵だからだった。現在、生ゴミ・リサイクルを実施している多くの市町村が、堆肥を作る“好気性醗酵”だ。これだと施設から臭いが出る。しかし、メタン発酵はタンクに閉じ込めて発酵させる“嫌気性醗酵Wのため、臭いが外にでない。また、集める生ゴミも、水切りがしっかりされていて、臭いが少ない。各家庭には、二重底の水切りの仕掛けがあるポリバケツが配布されている。生ゴミ回収日は週2回ある。こうした生ゴミの集め方は、レインボープランで有名な山形県長井町から学んだという。
メタン発酵でできるのは、メタンガスの他に液肥だ。できた液肥は黒い液体だ。これも臭いがない。液体に顔を10センチ程度まで近づけると、やっと臭いがわかった。すこしドブくさい。これなら田んぼや畑にまいても臭わない。
デポジットの実験も
おおき循環センターのすぐ隣には、いわゆる“道の駅”が併設されていて、レストランや市場が営業している。
道の駅に置かれた飲料の自動販売機、そこがまた、さすがごみゼロ宣言のまち、と言わせる仕掛けがあった。飲料は10円の預かり金(デポジット)を上乗せして販売している。自販機には、デポジット返金装置があり、空き容器を投入するとデポジット金額が返金される。
なんと清掃費が削減
施設には太陽光発電とかわいい風力発電も付いていて、さぞかし多額の資金が投入されたのだろうと思ったらそうでなかった。確かに、くるくるセンターの建設費は、25億円あまりと高額。その半額は国からの助成金という前提ではあるが、以前に比べて清掃費用は減ったという。大木町では、生ゴミのリサイクルを始めて、燃やすごみの量は一気に半減した。それまで燃えるゴミの焼却は隣町に委託してきた。その委託金額が減ったことで、むしろ清掃費用は以前よりも安くなったのだ。
「拡大生産者責任の徹底を」と全国に発信
大木町では、これから、プラスチックのリサイクルに取り組んで、数年後のごみゼロを達成するという。一石二鳥にも三鳥にもなっている、この取り組みが成功しているのは、地方の小さな町だからだ、といわれるが、これなら都市近郊の自治体でも可能ではないかと思えてきた。
また大木町では、「拡大生産者責任の徹底とデポジット制度の法制化」を実現させようと、全国の自治体に働きかける準備をしている。今年の春に大木町で開催された“環境自治体会議in大木町”で、法制化を決議したからだ。(環境自治体会議とは、全国60余りの環境を大切にする自治体が集まって毎年開催される会合のこと)
大木町は、ごみゼロ実現とともに、拡大生産者責任の徹底などの実現を呼びかけなど、持続可能な循環社会づくりのトップランナーとして。小さな町の大きな挑戦を始めていた。
(2010年9月27日)