「市民立法機構」の総括と展望

2000.5.13

「市民立法機構」は、発足4年目を迎えた。市民による立法の動きは、全国的に広がりを見せている。私たちの運動が目指す「市民社会の合意形成」が進みつつあると言えよう。他方、私たちの「機構」自体が、立法に向けてどのような運動を進めていくべきか、運動をどう組織していくべきか、改めて考えて見なければならないところに来ている。

これまで機構が独自に進めてきたプロジェクトも設立以降、遅々とはしているものの着実な歩みを重ねてきた。リターナブル容器普及プロジェクトは、調査・研究を重ねて小売容器負担金制度の提言をまとめ、他の市民団体とともにより広範な運動をつくりだすべく「プロジェクトBIN」設立準備会の開催にまでこぎつけた。また日本における寄付のあり方を議論した懇談会から、市民セクターに人・モノ・カネを集めるための政策を研究する「市民セクター経済圏研究会」が生まれ、活動を開始している。この他にも男女共働社会を築くための制度を提言してきた。

しかし、私たちの「機構」の今後を考えたとき、いくつかの問題が浮かび上っている。一つには、経済界との連携が必ずしも進展していないことである。「連携」は、市民運動を狭い意味での「市民団体」に閉じ込めないようにするという意味で、発足以来特に力を入れてきたことである。それなりの成果もあげてきたのではあるが、連携する相手にある種の限界、偏りが見えることは否めない。

これに関連することとして、もう一つは、組織としての弱さを考えざるを得ない。これは、会費制や専従者を持つ固定的な組織を作らず、緩やかなネットワークによる運営を企図したことの当然の結果であるともいえる。ただ、それにしても、活動の継続性とそれに基づく発展を考えれば、この組織上の弱点を克服するなんらかの手立てを考えねばならない段階にきているのではなかろうか。それは、いうまでもなく財政上の基盤をどう整えるかと言う困難な問題を伴っている。

今後の課題として、これまでの「市民立法」の成果を、法の運用の中で実際に活かして行く事も考えねばなるまい。例えば、「情報公開法」が、2001年度から施行されるが、真の情報公開が一遍の法律で進展するとは言えまい。NPOも、法制化されて1年余を経たが、市民がその創意とエネルギーを十分に活かす制度として定着したとは言えず、NPOが助成金依存に陥る危険性もある。

一方、今年の4月1日から施行された地方分権推進一括法で機関委任事務が廃止され、各自治体で独自の条例がつくれるようになったという明るいきざしもある。

私たちは、新しい立法の試みを進めながら、同時に、作られた法律をその趣旨にそって活かして行くことにまで踏み込んで行きたい。立法の実利を、身近な生活に顕現することを通じて、市民による立法にもう一つ弾みをつけていきたい。

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