第4部 新しい市民社会の骨格づくりを検証する
「NPO条例案−NPO法案」
山岡義典(日本NPOセンター事務局長)
NPO法案ですが、この呼び名がいいかどうか。必ずしもNPO全体に関わる法案ではないのです。NPOというと様々なものを含んでしまいます。市民活動団体というNPOの中のある分野の団体の法人格を考えるのが、このNPO法案と通称言われているものなので、私たちは「市民活動関連法案」という呼び方がいいのではと思っています。与党三党からは「市民活動促進法案」という名称で出ておりますし、新進党からは「市民公益活動を行う団体に対する法人格の付与等に関する法律案」という1回では覚えきれない名前になっておりますし、共産党では「非営利団体に対する法人格の付与等に関する法律案」ということで、幅広く色んな団体に法人格を与えるという案です。それで、どうしてこういう法律が今ごろ議論されているのかということですが、先ほど松下先生が、あの壁にいっぱいぐらい本棚があって、それに100年以上の明治以来の法律がたくさんあると言われました。そのたくさんある中に101年前にできた民法がありまして、その前半はカタカナで書いてあります。まだカタカナで書いてある法律が日本にはありますが、これは要するに戦後改革を経ていないわけで、101年前の民法の前半部分で法人制度というものができあがっているわけです。
先ほどこの市民立法機構は法人になるのかという話がありました。株式会社でやるならば、すぐできます。儲からない株式会社があってもいいと思いますが、株式会社市民立法機構ならば、役所へ届けでないですぐできるわけです。でも非営利を主張しようと思うと、社団法人か財団法人にならなくてはいけない。財団法人になりますと5〜6億円の金を積まなければならない。社団法人でも年3000万円くらいの会費を集めなくてはいけない。そしてどうなるかというと、主務官庁に届け出るわけです。市民立法機構なら立法のことだからこれは法務省の所掌事務だろうということで、おそらく法務省が主務官庁になります。法務省でも担当は法制局だろうということで、法務省の法制局に行って頭を下げて申請し、法制局にも役に立つなと思えば、許可されて、法人化されて、監督を受けるわけです。そういう監督の中で、日本の立法制度はおかしいから仮に法制局をつぶそうというような提案をしようと思うと、これは監督には馴染まないわけです。そういうことで、おそらく市民立法機構は、現在の公益法人制度で法務省の許可に基づく社団法人になることは、私はありえないと思います。
実をいいますとこういう団体がたくさんあります。現在の主務官庁制の下での公益法人に馴染まない団体がたくさんでてきた。しかし規模が小さいうち、活動計画がゼロという段階のとき、法人格は必要ありません。予算もまだ何十万円あるかわからないような時に、法人格はなくていいと思います。でも本気になって、調査機関になってシンクタンクとして活動しようと思えば、市民立法機構も法人格が将来、必要になると思います。そこでどうするかというわけで、新しい非営利法人制度が必要だということが、10年前ぐらいから言われてきたし、私もずっと言いつづけてきました。そういう中で震災の前年1994年の秋にシーズのような市民団体が出て、むしろ市民団体や民間の研究団体からこういう法人制度が必要だと言う意見が出てきたといういきさつがあります。
今回の法案の内容につきましては、時間の関係で省略しますが、新進党案は、地域、都道府県を基盤にした活動に法人格を与えようとしております。それから与党三党から出ているのは、11項目の活動内容に限定して、ある程度何らかの点で無償性というものをもった団体に法人格を与えるようにしようとしています。共産党の場合は、幅広く非営利であれば、簡単に法務局に登記すればいいというようにしようとしています。共産党の案が一番馴染みやすく、こういう案ができたらさっぱりするという案なのですが、このためには民法改正というハードルを越えなければいけません。そのためには、様々な議論があって今日明日つくろうというわけにはちょっといかないと思いますが、ゆくゆく私たちが実現したい案を共産党案は示してくれていると思います。その他、さまざまな民間団体、市民団体も法案を発表しています。私自身も研究会をつくってそういうのをやりましたし、シーズも出していますし、日本弁護士会も出していますし、青年会議所も出しています。あるいは「構想日本」も出していますし、これについては朝日新聞の昨日の「ひと欄」にちょっと出ておりましたが、様々な団体がこういう制度が欲しいという提案をしています。
実は、議論を含めて、今どうなっているかというと、与党三党の提出した案に民主党がかなり市民団体側の意見も入れて修正要求を行い、それで納得がいけば民主党も合意する形で、与党案をなんとかこの国会に審議にかけようというところにきています。市民団体側からも色々要求が出ています。税制優遇についてもうちょっとはっきりとした見通しを立てて欲しいとか、11項目の限定列挙を何とかもう少し幅広く自由度のあるものにしてほしいとか、監督はできるだけ無くして欲しいとか、提出書類をもっと簡便なものにしないと困るとか、色々なことを言っています。そういう問題も、実はこの冊子の中に全部入っていますし、民主党が提出している修正要求については今日の資料の中にも入っています。
今どういうふうになっているか、この現在の国会は6月18日までですが、それまでに審議がぎりぎりできるかどうかというところでございます。実は今朝、与党三党に民主党が加わって、民主党による修正要求、かなりの程度、与党三党によって受け入れられているようですが、その合意文書がほぼできたと聞いています。11項目限定列挙については、市民活動を促進するための活動というようなものが加わるとか、環境も地球環境だけに限っていたのを地域の環境、身近な環境を守るための活動もちゃんと入るようになったとかがあります。それから会員の3分の1以上が報酬をもらってはいけないという規定がありましたが、これは名簿を提出して、もう会員を全部チェックしないとだめなわけです。これはやはりプライバシーの問題もあり、ぜひやめてほしいという要求をしていましたが、これも入れられました。その他いくつかの点で、修正が受け入れられつつあります。
ただ私としてはまだ市民団体の立場から言って、これは修正をぜひして欲しいと思っている点が一つあります。重要な点ですが、必ずしも表の議論に出てきません。事務所が一つの都道府県にある団体は、都道府県知事が認証します。認可ではなく認証にしようということになっています。認証というのは宗教法人が使っている言葉ですが、認可よりも行政判断の伴わない行政行為です。この認証ですが、二つ以上の都道府県に事務所がある場合には、経済企画庁がすることになっております。これはある意味でやむを得ない方法かと思いますが、その場合、認証にあたって経済企画庁はそれぞれの活動を行う主務官庁に相談をすることができるとなっています。おそらく「することができる」となっているのは、結局せざるをえないということになると思います。例えば、ある環境団体があって、経済企画庁に申請した場合、環境庁に「あの団体をどうしよう」と電話するわけです。するとどう答えていいかわからなくても、何とか答えるわけです。それで、やはり「認証をやめよう」と。そういう判断がなければ、相談する必要がないわけです。とにかく相談しないといけないということになると、これは従来の主務官庁制と同じになります。市民立法機構が、東京都と神奈川県と両方に事務所があるとして、経済企画庁に申請すると、これは法務省に相談してみようと、相談できるわけです。これは非常に大きい問題を抱えていると思います。後で言う条例も、都道府県がやる場合も、これをまねて都道府県が認証を出そうとする場合には、それぞれの部長、局長に相談することができるとなるかもしれません。それから、これは逆に言うと、この認証という行為は、行政判断を含めないということで、認証という言葉を使ったはずなのに、この認証という行為が一体何なのかということになります。行政判断を伴う行為に、この認証をしてしまうわけです。もちろん勝手に相談していただくのはいいわけですが、これはぜひ法文から、法案の中でそれぞれの主務大臣に相談することができるという部分は、ぜひ外して欲しいと私は思っています。その他色々、解散命令を所轄庁が出せるという、非常に大きな問題もあります。そういう問題はあるにしろ、私は今の段階でいえば、この水面下で色々交渉しているのをそろそろ表に出して、国会の場で審議していただいて、そして審議の中で問題点がはっきりさせればそれを修正し、早い時期にこの与党案での成立ができるということが、色々な点でいいのではないかと思っています。
税制問題で、特に寄付金控除制度について、ぜひもう少し具体的なものを附則に書き込んで欲しいという要望もあります。それに越したことはないが、あまり税制優遇を具体的に書き込むことに時間をとって、法人制度そのものが歪みをうけるようなことは問題だと思います。私は法人制度をきちっとつくることが今重要だろう、あるいはできないまでもきちんとした審議を国会の場で早くするということが重要ではないかと思っています。
実は今日は条例の話が前段であります。条例の方が市民立法になじみやすいわけです。ところが条例の場合、二つありまして、今のNPO法案は、法人格の問題です。法人格というのは、法務省の登記の問題で、都道府県ごとに法人格をつくるということはできないわけです。登記制度が国のレベルですから、法人格の問題は国の政策になります。それでNPO法案というのは、最初に国法の問題にいってしまったわけです。ですから都道府県では、全く議論ができていません。こうしたやり方ではなく、それぞれの地域でできる条例を積み重ねていって、その上で国法をつくる。これが市民立法に馴染みやすいわけですが、NPO法案は非常に市民立法に馴染みにくい。それぞれの地域では、東京では騒いでいるようだが、我々には何のことかさっぱりわからないという状況があって、これは市民団体だけではなくて、都道府県、市町村もそうです。
ここで初めて、日本の中にこういう仕組みがないということがわかりました。それは、今の与党案では、都道府県知事の認証は、団体委任事務でするということになっています。新進党の案では、認可で機関委任事務なわけですが、最近これは団体委任事務に変えてもいいという修正の意見が出ています。団体委任事務とは、それぞれの都道府県が独自の判断でやるわけです。機関委任事務ならば、霞ヶ関から政令がきて、政令に従ってやればいいわけですが、団体委任事務になると条例をつくって、それぞれの都道府県でやらなくてはいけないという法案なのです。ですから、この法案がもしこの国会で通れば、おそらく来年の4月以降施行するとなると、それまでに都道府県は、どういうふうに認証しないといけないかを条例で決めないといけない。今、条例をつくらないといけないという連絡が、都道府県にいっているわけですが、議員立法というものと団体委任事務というものが重なった時の条例のつくりかたの仕組みが全然ないわけです。これがいわゆる政府立法であれば、立法する経済企画庁などから、こういうのができる、できたらこうなる、こういう時に条例はこうすればいいとか、モデル条例ぐらいは大体提示するわけで、今まではそうでした。ところが議員立法ですから、ここで役所が、官僚がでるわけにはいきません。従って、霞ヶ関からは、この法案についての情報は、都道府県に、全然出ていません。出ていなくても、これまでのような機関委任事務であれば、政令が降りてくるのを待っていればよかったのが、団体委任事務になったわけです。団体委任事務とは、それぞれが自主的にやりなさいということなので、どうしようという問題が起こります。その時の情報のルートがない。
それでは、それぞれ法案を提出した議員さんが各都道府県に行って、説明しているかといっても、説明はできない。おそらく各都道府県出身の議員も、地元で説明できるほどの説明力をもっていませんから、議員が直接説明するわけにもいかない。役所も説明するわけにもいきません。しかし各地方自治体は、条例をつくって何とかしないといけないという状況にきて、そういうルートが日本にはなかった、議員立法と団体委任事務という流れが一緒になった時の、この国法と条例の関係を取り繕う団体や仕組みがまったくないということに気がつきました。
私どもの集会で、ある県の担当者が言っていたのですが、この法案についてはさっぱりわかりませんし、アンケートがきても、アンケートに答えようがありません。法案のコピーは送ってきても、読んでも何のことだかさっぱりわからないということがあって、日本NPOセンターでは急遽23日に都道府県の担当者向けの解説を含めた議論する場をもちました。そして都道府県の方同士も、そういうことについてお互いに霞ヶ関から何もこなくても、自分達で話し合う場ができるようになればと思います。とにかく新しい時代に向かって、仕組みが何もないというのがやっとわかりました。議員立法と団体委任事務という二つのキーワードが結びついた時に、それを動かす仕組みが日本に全くなかった。しかし民間団体としての日本NPOセンターでやろうと思えば、できるわけです。こういう民間の仕組みがないと、今後の条例づくり、法案づくりができません。だから霞ヶ関に代わる部分を、誰がどう担うかということが重要な時期にきています。条例づくりについては、シーズでも進めているようですし、また色んな都道府県でも勉強会をやっています。また私も地方に行くと、「条例をつくるならこういうこと入れておいてよ」と色々なアイディアを撒き散らしております。そういうアイディアがどうなるかわかりませんが、私は機関委任事務から団体委任事務になったことによって、今混乱はしていますが、やはりこういう混乱を経て、自治体が自治体としての認識を得ていくのではないかと思っております。
(須田)ありがとうございました。それでは討論に移りたいと思います。ご質問も含めて一緒に議論をした方がいいと思いますので、ご意見を出してください。
実をいいますと、5年ほど前に、私もあるブックレットでNPOの制度をつくれということを主張したのですが、その時から今日ご挨拶をいただいた松下さんが、「おまえああいうことはやめといた方がいいぞ」というふうに一貫して警告を発しておりまして、それは、そういうことをすると市民団体が選別されるから、あんな制度はいらないという人もいるわけです。彼もこの期間、一生懸命説得をして、そういう法人という制度が市民団体にも必要だということを言ってきているわけですが、先ほど政井さんがおっしゃられましたように、市民団体の中で、はたしてこれで意見が統一できるのかどうなのかという問題があると思います。
私自身は、普通の市民社会が法人社会である時に、市民だけが「人格なき社団」という名前をもらいまして、人格がないなんていう言葉を平気で使う人間の憲法感覚を疑うわけです。それこそ、さっきの明治以来の民法概念があるからだと思うわけです。それでもなってくれればいい方だったのですが、それよりは、やはり金儲けだったら株式会社がすぐ申請してできる。それから、公法人は、それがいいかどうかわかりませんが、役人が勝手につくる。そういう状態で、市民団体が全く何も無い無権利状態になっているのはおかしい。だから、それを何とかしなくてはいけないという主張を繰り返してきているわけですが、その主張がでてくると、逆手に色んな面で取られてきているということが今現実だと思います。
山岡さんの今の判断、ここまでこういう風にやってきて、こういう様々な論点については、こういう風に妥協を図りつつあるので、できたら今つくった方がいい。これは、かなり運動をやってきた人たちの、かなり多くの人たちの共通する判断です。その上で、実際は条例でちゃんと対応しなくてはいけなかったわけですが、条例で対応すべきすべが、今の所ありません。その取っ掛かりがないままで来ていますが、それでは実際、どうしていくのか、この問題をどう考えるのかということになってくると思います。どうぞ、どなたでも結構です。話がやりにくいかもわかりませんが、シーズの松原さんからお願いできますか。何か他の人が議論しやすいようなことをしゃべってください。
(松原)条例の話は、今、山岡さんが言われたことにつきると思います。シーズ=市民活動を支える制度をつくる会の松原と申します。NPO法案をずっとやってきましたが、確かに現場の話を聞いていると、今回経済企画庁が担当省庁ですが、各都道府県が経済企画庁に聞いても答えてくれない、どうしていいかわからないという声ばかり聞こえてきます。しかも今までならば、地方自治体の人が言うには、経済企画庁が法律のつくり方はこうでしたよと、今まで必ず役所の方が、こういう法律をつくるからと、地方自治体に全部文書をまわして、地方自治体がそれは困りますと、全部それをアンケートに書いて流す。それでお互い連絡をとりあって、細部つめた上で法案として出してから、議員にもっていくというルートで、今回はぜんぜん議員からも話しはこない、経企庁からも話しはこない、おまけに経企庁にも議員から話しはいってないということで、何をどうしていいかわからない。都道府県の人たちは、不安不安でたまらない。もしくは、面白くてたまらないというの話を聞いていますが、非常にいい時代になってきたと思っています。NPOは、山岡さんがおっしゃたように、市民活動と地方自治体との関係を、各地方自治体が独自で色々なことを考え出さなくてはいけないという要素が、今からもしこの法案が、成立すればできてきます。
そこでかなり地方自治体ごとの市民活動との付き合い方で積極的な都道府県と積極的でない都道府県の色分けができてきて、それをもって市民側が積極的に都道府県に対して、「どうしてそんなに積極的ではないんだ」とか「積極的な取り組みをもっとこうしろ」とか言っていけます。バラバラになって困るという人もいますが、僕はバラバラになって、かえって攻めるところがたくさんできて面白いと思います。そういう風な競争をしあえるような時代が、競争してまたその競争に付け込めるような時代がきてくれないだろうか。これまた次の情報公開法で、三宅さんが話されると思いますが、情報公開条例をみていてつくづくそう思ったわけですが、そういうのが色んな法律でできてくることが、日本の状況も大分変わってくるんだろうと思います。
(参加者)全く無知識なので、大方の方がおわかりかどうか。市民運動の中に、選挙、投票をめざしてというのは、非営利ではありますが、その辺のしきりはあるのでしょうか。政治活動というか、政治活動よりむしろ選挙活動を前提とした市民運動を装ったということが、地方の場合は往々にして有るのですが、どうなのでしょうか。
(山岡)現在の与党案については、政治的な主義主張を主な目的にする団体はだめ、それから選挙への関わりはだめというふうになっています。そのことが逆に、政策提言などをやりにくくする面があるのではないかということで、いろいろと議論をしております新進党の案ではそれが全部ありません。宗教だろうが、政治だろうがなんでもいいということになっています。与党案では、その点が選挙運動はだめということと、政治的な主義主張をする場合はだめ。そこをどこまではよくて、どこまでが悪いのか。政策提言を制限するものではないということを、むしろ議会あたりできちんと議論しておいて欲しいと思っています。
(須田)市民立法機構はどうでしょうか。
(山岡)政治的な主義主張にはあたらないのではないかと思います。ただ、今の11項目には入りません。修正によって市民活動を促進するための活動ができれば、市民立法機構も入るかと思いますし、政策提言する分には問題ないので、政治活動にはならないと思います。
(須田)立法をするつもりなのですが。
(山岡)立法の提案はいいと思います。
(須田)どうぞ、ご質問なり、ご意見を出してください。私は一番不愉快な言葉は、法人格を付与するのは国家の権能である、という考え方が非常に強いわけです。法人格を付与するという、なぜ付与されなければいけないのか。必ず行政法の本には、国家の権能であると書いてあります。それを今度は、団体事務で、都道府県に任せることがはたして今の国家はできるのかということが、僕はまだ疑問に感じている所です。その辺を含めて、条例からつくっていくことができなかったというのは、やはり全く未踏の分野だったからだと思いますが、むしろ条例からだったら、こういうことが考えられるというご意見をどうぞ。
(参加者)質問ですが、先ほどのお話の中で、霞ヶ関に代わるところが必要だとおっしゃられましたが、そこをもう少し詳しく説明して下さい。
(山岡)今までは法律をつくるのが、たいてい霞ヶ関だったから、こういう風な法律をつくりますと色々PRをするわけです。PRするとうまく新聞社にでも情報を流して、各省庁には記者クラブがありますから、記者発表をして流す。そういう情報を流す機関が、議員立法の場合はありません。ないというより、議員たちだけではできないわけです。ですから、おそらくそういうものをどこか、この法案については、今回はシーズというところがこんな形で出しています。おそらく、これ以上の解説書は今ありません。3年以上関わっていて、専属スタッフがいた市民団体があったからこれだけの解説書ができるわけです。今まで、役所がやる閣法だったら、こういうものをすぐ役所はつくってしまうわけです。ですから、そういう意味でいうと国会でなにが行われているかということを伝える情報を、しっかりと民間団体の立場で伝えないとおかしいことになります。政党からの情報はありますが、政党からの情報はなかなか市民に伝わらない。だから従来のように8割以上が政府の法律だったら、それで別に問題がなかったわけですが、今やかなり国の根幹に関わる法律を議員立法でやろうと言い出して、はじめてそういうものがないということに気がついたわけです。
(又木)ローカルパーティーで神奈川ネットの又木と申します。今の方の質問が、もう少しつながるのかなと思っていたのですが、私の方でつなげさせていただきます。今、霞ヶ関に代わるということで、自治体が自治体の認識をつくるとおっしゃって、でも日本は国ももちろん霞ヶ関が政治をしていますけれども、自治体もミニ霞ヶ関になっています。私も県議をしていますが、自治体の県や市のもっている行政の政治の強さ、行政が政治をしているというのは、日本中同じです。それがせっかく市民の、議員の立法過程で、地方分権によるある種の制度ができて、それを市民団体が自治体にアドバイスをして、自治体に条例をつくらせようとするというのが、私たちから見ると、地方分権が行政分権にすぎなくなるのではないかと危惧するわけです。だから、もちろん今それを全部やめろとは言いません。たぶん緊急避難的に必要だと思いますが、おそらく最初にやるのは、やはり47都道府県の市民を、市民団体は全部地方にあるわけですから、どう動かすかだと思いますので、少し補足の話をしてください。
(山岡)まさにその通りですが、地方議員がこの条例にほとんど興味をしめしてきません。わからないという悲鳴をあげてくるのは自治体です。僕は、本来なら地方議会、都道府県議会の人が悲鳴をあげてくればと思います。この冊子は別に都道府県の役人には出すけど、議会には出さないのではなくて、市民でも誰でも手に入るものです。そこが僕は非常に問題だと思います。僕らも別に都道府県の行政の担当者だけを、相手にするのは変だと思っています。本来なら都道府県議会の人たちが、押し寄せてきて「どうなのだ」と言ってくれるのを待っています。しかし、そこまでは面倒見切れません。そうなるように僕は地域ごとに市民団体が立法機構をつくって、都道府県議会の議員をもっともっと動かして欲しいという気はします。
(又木)簡単に言いますと、みなさんの市民立法機構もそうですけど、問題はみなさん中央によって運動しているのではなく、各地域で運動している市民団体が多いわけです。だから、それが立法の所で政党は動かすことができたけど、自分達の住み暮らす地域で政治の方を動かせないということで、一度、自分達の問題をあらった方がいいのではないしょうか。もちろん、私も地方の政治をやっている側ですから、私たちは市民活動法人法という案をつくりましたけど、自分達にその力がない、やはりその意識を地方の政治の中に、市民グループが持ち込めないことを、自分達の方の問題として整理していかないと、それをやる議員がいないというだけで、やはり行政に向かい合ってはいただきたくはないと思いました。
(須田)それでは、山岡さんありがとうございました。
(山岡)一言だけ言っておきますと、月曜日12日の夕方、与党三党と民主党が、話し合いをやるということで、関係者を呼んで意見を聞きたいということで、私も案内を受けております。12日の夕方、どうするか、僕はなるべく早く国会審議にかかって欲しいと言いたいと思いますが、審議に来週中に入る可能性があるということでウォッチしていただければと思います。
(須田)ありがとうございました。市民団体に市民権を付与するのは、市民の権能でありまして、国家の権能ではないわけでありますので、どんな法律ができるのかまだよくわかりませんが、少なくとも自由な市民活動を阻害するような法律だけにはならないようにすることが最低限の条件だろうと思います。