確かな足場を築くために

1998.5.29

政界、経済界から教育現場、家庭内にまで閉塞状況が広がるなかで、私たち市民が自ら立法に取り組むためにたち上げた「市民立法機構」は、発足二年目を迎えた。さまざまな障害を乗り越えて、市民立法で八方の壁を一つ一つ突破する実績を示していかねばならない時が来ている。

市民立法機構は、分断されがちな市民のエネルギーを「立法」に向けて結集するためにつくられた。一つには、いわゆる「市民団体」が狭い殻に閉じこもらずに、広く市民の支持を得てお互いに協力し合えるように。さらには、企業や労働組合などの組織とも十分に連携していけるように。そのことによって、立法を、自分の専管事項であるかのようにふるまっている越権的官僚機構から、本来の立法者である国と地方自治体の議員たちに取り戻すことを目指している。

立ち上がりからのこの一年、市民立法に向けて画期的な変化が次々に起きている。各種の立法テーマごとに、市民団体から手づくりの法案が議員の手元に持ち込まれている。市民立法を本格的に進めていくための好条件もつくられている。NPO法が成立し、情報公開法も成立に向いつつあることなどである。いずれも市民が長い間成立に向けて努力を続けてきた法律である。NPO法によって、市民による各種の活動に対する社会的支持が得やすくなり、老人介護や環境保全などの仕事を市民が行政に代って自ら進めていくための足場が広がるだろう。また、情報公開が制度化されることで、各種の行政を官庁まかせにせずに、市民が十分に監視し自ら参画していくきっかけが生れるだろう。これらによって、個々の市民や企業が必要とする法律、条例を自らの手元で立案するために必要な知識、経験が蓄積されていくに違いない。

とはいえ、立法に対する官僚の越権に、十分対抗できるだけの条件が整ってきたわけではない。NPO法にしてからが、「NPO」のお墨付きは官僚からもらわねばならず、悪くすればこれまで以上に官僚の手の内に抑え込まれてしまいかねない。そして、私たちの立法への期待をつなぐべき国会の情勢は、むしろ市民勢力の後退さえ感じさせる。

市民の日々の願いと未来への夢を、立法というかたちで結実させていくため、私たちの「機構」は誰よりも市民の信頼を得なければならない。また企業とも、より近くより深く連携していかねばならない。したがって、「機構」の存在自体とその活動を、まず知ってもらわねばならない。二年目を迎えて、私たちは日本の経済、政治に対する国際社会の信頼な失墜させる元になった官僚統制の撤廃に力を入れ、国から地方への分権を進めることによって、より身近なところで立法過程に踏み込んでいけるようにしていきたい。NPO活動を本格的なものとしていくための税制改革も進めていきたい。分権などによるこうした条件整備を進めながら、これまで取り組んできた「容器製造時負担金制度」「男女共働社会」「寄付金制度による市民活動のテコ入れ」や京都会議後の地球的課題である「温暖化防止活動推進」について、具体的な法案作りを進めていく。

各種の課題に取り組んでいく過程で、政府、企業、そして私たち市民の三者それぞれの役割と拮抗関係が明確になっていくだろう。しかし何より大切なのは、この三者がお互いに足を引っぱり合うのでなく、それぞれの役割を活かして連携できるようにすることである。私たちはこの連携のための場を次々につくりながら、「市民立法」へのより確かな足場を築いていきたい。

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